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第19回
慢性腎臓病(CKD)1/2

腎臓病は無症状。不調で病院へ行くころには即透析

「慢性腎臓病(CKD)」とは、3カ月以上持続する尿異常(蛋白尿、血尿)、腎形態異常または腎機能が約60%未満まで低下した状態で、慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症、多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)など、放っておけば腎臓の働きが弱り、透析に至る腎臓病を総称する概念。2002年にアメリカの腎臓財団が提唱した概念だ。つまり、まだ10歳を迎えたばかり。日本では、2006年に「日本慢性腎臓病対策協議会」が設立され、本格的に取り組まれるようになった。

こうした動きの背景には、世界中で人工透析や腎移植を必要とする末期腎不全の患者数が増えてきたことがある。

「今、日本では30万人ぐらいの透析の患者さんがおり、年間3万人が新たに透析をはじめています。腎臓病は自覚症状がまったくないので、だるいとかむくみがでてきたといって病院を受診したときには、昔なら手遅れでした。でも今は、透析をすることで普通の生活が送れます。海外旅行も仕事もできる。ただ問題は、透析にかかる医療費が非常に高いこと。治療法があって命が助かるのはいいのですが、患者さん一人当たり年間500万円ほどかかるので、透析医療費は日本の総医療費の3~4%に達しています。
ほとんどは社会保障で賄われるので、患者さんには負担はすくないものの、国としてはお金がかかる、患者さんにとっては、もっと早く治療していれば透析をしなくて済む。そこで、病気に対する理解を広め、早期発見・早期治療をうながすために、慢性腎臓病という概念が提唱され、啓蒙活動が始まったのです」

こう語るのは、聖路加国際病院の副院長で、腎臓疾患医療の第一人者で知られる小松康宏医師だ。

実際、医療費の額は半端でなく、外来透析の医療費は1ヵ月におよそ40万円程度、入院による透析では入院費を含めて100万円近くかかることもあるため、医療保険に加入していても自己負担分はかなりの額となる。そうした負担を軽減してくれる公的な補助制度が「医療費助成制度」で、この制度を利用することにより、透析患者さんの自己負担額は1ヵ月1万円ですむ場合さえあるらしい。
しかし、患者にとってはありがたいが、赤字が膨らむ国家財政としては、できれば減らしたい支出である。無論、患者だって、好き好んで透析しているわけではない。

「透析を始める患者さんの1~2割は、なんの治療も受けないまま、いきなり透析に至っています。早めに発見して治療していれば、透析になるのは防げたか、先延ばしにできたのに、残念です」

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