名医に聞く

バックナンバー

第32回
白内障(はくないしょう)。日帰り手術で、安全・劇的に治せる

世界の失明原因のトップだが、手術が普及している日本では6位

全世界の失明原因のトップは、白内障(39.1%)。
以下、2位は屈折異常(18.2%)、3位は緑内障(10.1%)、4位は加齢黄斑(おうはん)変性(7.1%)、5位は角膜混濁(4.2%)と続く(世界保健機構(WHO)2004年発表)。

一方、日本では、1位は緑内障(25%)、2位は糖尿病性網膜症(21%)、3位は加齢性黄斑変性症(11%)、4位は網膜色素変性症(11%)、5位は視神経委縮(9%)という順位になっている(2005年)。

日本の失明原因の5位までの疾患は、進行してしまうという治療法のない病気。
安全で体への負担が低い手術が普及している日本では、白内障が原因で失明している人の率は1990年の3位(12%)から、2005年では6位(7%)と大きく減少してきている。

とはいえ、7%という数値は決して無視できるものではない。
日本において白内障で失明している人の多くは、
「高齢で体力がないため手術ができない」
「体調が悪く手術を希望しない」
という人たちだ。

しかし、今回ご紹介する赤星隆幸医師が考案し、広めている「フェイコ・プレチョップ法」なら、そんな患者も救える可能性が大きい。
まさに、暗闇に差す一筋の光明だ。

「視力は問題ないのにまぶしい」「月がダブって見える」は要注意

白内障は、古くなった機械が故障するように、眼球の水晶体(カメラのレンズにあたる部分)に寿命が訪れる状態。本来は透明であるはずの水晶体に濁りが生じ、きれいに光を通さなくなってしまうのだ。

「40代では20%、50代で50%、60代では80%もの人の水晶体に、濁りが生じています。
なんとなく見えにくい感じが、数年単位でゆっくりと悪化していくのです」(赤星医師)

具体的には、
1. 視力は問題ないのに、まぶしさを感じて見えにくいときがある。
2. 月が2つや3つにダブって見える。細かい数字が見づらくなり、6と8、8と9の区別がつきにくい。メガネをかけても改善しない。
3. 近視の度が進み、手もとが見えにくくなった。メガネのレンズが年々厚くなり、最初はレンズを替えれば見えたが、そのうち度数を上げても視力が上がらなくなった。しかし眼科では「白内障はない」と言われた。
4. 黒だと思って着ていた洋服が紺だった。
などの症状があらわれ、3のケースのように、眼科でも見逃される場合がある。

原因のトップは加齢だが、他の病気によって引き起こされることもある。
「たとえば糖尿病がある場合は、他の同年代の人に比べて白内障の進行が早くなります。またアトピーによって起こる『後嚢下(こうのうか)白内障』は、進行が非常に早く、ほんの数カ月で瞳が真っ白になるまで悪化します。
しかも高齢者だけでなく、10代後半から20代ぐらいでもなるのが特徴です。『後嚢下白内障』は、リウマチやぜんそくなどで副腎皮質ホルモンを長期間服用している人も多くかかります。
放射線も、白内障を引き起こします。多量の放射線を短時間に浴びた場合には、数カ月という短期間で水晶体が真っ白になり、視力を失います」
糖尿病、アトピーのある人は要注意だ。

コメント