名医に聞く

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第33回
めまい。全体の7割は耳から。治療は耳鼻科へ

最も多いのは澤穂希選手もなった良性発作性頭位めまい症

「めまい」といえば去年、サッカー女子日本代表・なでしこジャパンの澤穂希選手がロンドンオリンピックを控えた3月に突如襲われ、一時戦線を離れたことを思い出す方が多いのでは?

澤選手のめまいは「良性発作性頭位めまい症」。
めまいの名医として知られる山本昌彦医師は、「めまいを来たす病気の中では最もポピュラーな病気です」と語る。

めまいと聞いて多くの人がまっさきに思い浮かべるであろう「メニエール病」は、実際は、それほど多い病気ではないらしい。
「『メニエール病かもしれない』と紹介されて来院された患者さんのうち、本当にメニエール病だった方はわずか1~1.5%しかいません」(山本医師)

過去に、内科など他の診療科を受診したものの、治らなかったという患者の多くは、別のめまいの病気であったという。
「めまいの診断にはトレーニングが必要です。耳鼻科医ならそうしたトレーニングをきちんと積んでいますから、めまいの症状がある方は、まず耳鼻科を受診されるべきでしょう」

三半規管内に溜まった「ゴミ」がバランスセンサーを乱す

「めまい」は、病名であり症状でもある。
ぐるぐると目が回る、ぐらぐらと揺れる、ふわふわと身体が浮いているようなど、その感じ方はさまざまだ。

耳(内耳)から来るものと、脳から来るものがあるが、全体の7割は耳から来る。
耳からのめまいには、メニエール病、突発性難聴、前庭神経炎、良性発作性頭位めまい症のほか、事故や藥等による内耳障害があり、最も多いのが澤選手もなった良性発作性頭位めまい症なのだ。

「良性発作性頭位めまい症は、内耳の中にあるバランスを感じるセンサーの一つ、三半規管内の内リンパ中に、本来は存在しない「耳石」などのゴミが溜まることで起こるといわれています。 頭を動かすと耳石がリンパの流れを乱すため、バランスを感知するセンサーが混乱し、めまいを起こすのです。
この耳石は、あまり運動しない生活を送っている人にできやすいんですよ」

その他、メニエール病はストレスが原因で起こる場合が多い。突発性難聴、前庭神経炎は、原因がよくわかっていないが、体力の弱っている場合に起こりやすい。

とはいえ、澤選手に限って「運動不足」ということはありえない。
「同様の頭位性めまいは、交通事故のむち打ちや、転倒での頭部打撲でも起こりやすいのです。澤選手のめまいは、ボールのヘディングや転倒など、打撲によるむち打ちに近い現象を繰り返したために起きた可能性が強いと思っております」

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