文化とアートのある暮らし

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第1回
音を聴いてみる

新たにコラム執筆の仲間入りをさせていただくことになりました、ピアニストの寒川晶子です。芸術にまつわるおはなし、音楽にまつわるおはなしなど盛りだくさんで展開していけたらいいなと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

早くも夏が終わろうとしています。花火は行きましたか?そうめんは食べましたか?
そのほかにかき氷・セミ・川遊び・海水浴… 夏を連想するものはたくさんありますね。
花火の「ドーン!」という音は胸に響き、太鼓のようにも聞こえます。かき氷は「シャリシャリ」という音を連想します。セミは「ミーンミーン」と鳴き続け、川や海水は「ザザザ」という音を思い出させます。こうして記事を書いているといろんなものに音があるなぁとつくづく思うのですが、みなさんは何かから音を連想したことはありますか?
夏の行事だけでなく、生活環境には音がたくさん存在しています。

狭い団地で育った私にとって「生活の音」が何よりの癒やしになっていました。ま向かいの小学校からきこえる声、縦笛の合奏、登下校のざわめき、ご近所さんが何か物を落とす音、玄関の音、大きな笑い声。 生活の音に囲まれ、音のしない環境で暮らした記憶がありません。 今ではご近所トラブルの大きな要因になっている「音」ですが、自分が意図しなかったところで音が鳴り、それが聞こえてくるのは私にとってある種の安心感に繋がっています。そこには他人であれど、生活の音があり、太陽が昇れば活動し、月が出れば休息を取る、ただそれだけの日常からぬくもりを感じることができる一つのきっかけがあります。人のいるところに必ず音はあるのではないでしょうか。

ところで楽器を演奏するには人の手による世界が入ってきます。演奏することは楽器の機能性だけでなく、そこに演奏家の手による加減や体重の重みが関係して個性があらわれることを想像すると、とても奥深い次元に行き着きます。
このように奥深い「演奏される音」と、生活していくなかで「出てしまう音」の違いは大きいかもしれませんが、世界のどこに行っても存在している「音」にとても惹かれるのです。身近な環境音に耳を傾ける、この些細なことを意識的におこなってみると、不思議と身体の感覚が外に開かれていくかのように頭の中でその音が大きく響いてきます。聞くことを習慣化していくときっと集中力を高める力を養うこともできるでしょう。身近に聞こえる音に楽しみを持ちませんか。

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