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第1回
映画の題材になり、注目されつつある「越前和紙」の魅力とは

映画『HESOMORI—ヘソモリ—』の主人公である紙漉き職人・さとし役を演じる永島敏行。映画では紙漉きのシーンが数多く登場する。

9月22日(木)に東京駅行幸地下通路で、「第4回 丸の内行幸マルシェ×青空市場」が開催される。その一角で、福井県の伝統文化・越前和紙の紙漉きというユニークな体験ができる。

「青空市場」は、生産者の顔が見える市場として、2004年から2011年2月までに計47回開催している。実行委員長を務めているのは、俳優の永島敏行さん。のべ集客数は10万人を超えるというこの「青空市場」と三菱地所が協力して、丸ビルと新丸ビルをつなぐ地下通路のスペース・行幸地下ギャラリーで定期開催しているのが「丸の内行幸マルシェ×青空市場」だ。今回は、越前和紙の工場が舞台となる永島さんの主演映画『HESOMORI―ヘソモリ―』公開開始のタイミングもあり、越前和紙のブースが設けられる。

越前和紙とは、日本三大和紙のひとつであり、福井県の嶺北(※越前)地方で製造されている和紙のこと。1500年前に、岡太(おかもと)川の上流から現れた美しい姫が、村人に紙漉きを教えたという伝説が発祥となる。その姫は、全国で唯一の紙祖神(しそじん)・「川上御前(かわかみごぜん)」として岡太(おかもと)神社に祀られている。言い伝え通り、水に恵まれたこの土地で、今日に至るまで優れた和紙の文化が育ってきた。

紙祖神川上御前をお祀りする岡太神社と
大瀧神社の式年大祭

日本に紙が伝えられた4~5世紀ごろに、越前ではすでに紙を漉いていたことが正倉院の古文書に示されており、特に写経用紙や加持祈祷札用紙として広く使われていたという。その後、公家武士階級が紙を大量に使いだすと、紙漉きの技術や生産量が向上。日本最古の藩札「福井藩札」や、明治新政府発行の「太政官札」の用紙も越前五箇(※越前市岡本地区)の地で作られたものだ。

越前和紙は、保存性、耐久性に優れていることから、朝廷、幕府、諸大名の御用紙として、また、浮世絵用紙としても使われていた。横山大観をはじめ、平山郁夫、ピカソら、多くの芸術家の支持を得たことでも知られている。

越前和紙の製造工程は、大きく3段階に分かれる。楮(こうぞ)や三椏(みつまた)といった和紙の原料の繊維質を抽出しやすくするための“煮沸”、繊維質をたたいて分解する“叩解(こうかい)”、分解した繊維を元に紙を漉いていく“抄紙(しょうし)”。これらを8つの工程にわけて丁寧に施すことにより、美しくなめらかな和紙に仕上がる。

紙作りで最も中心となる抄紙(しょうし)の工程では、漉舟(すきぶね)の水中に紙の材料を分散させて、簀桁(すげた)ですくい上げていく。一見単純に見えるこの作業に、伝統の技術が生きている。漉き子の揺り動かす微妙な手の動きにより繊維がからみ合い、紙が漉きあがる。紙漉きが難しいと気が付くのは10年たってからだと言われるほど、匠の技が際立つ作業なのだという。

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