コミュニケーション達人への道

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第66回
環境と人がコミュニケーションへ及ぼす影響

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割れ窓理論はご存じですか?
アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングが考案した「建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、やがて他の窓もまもなく全て壊される」(参照:ウィキペディア)という理論です。

この割れ窓理論では有名なエピソードがあります。

以前、一時期、ニューヨークは夜の外出が出来ないほど治安が悪く、犯罪が多発することに頭を悩ましていました。そこで当時の市長が注目したのは落書きや、ゴミの放置、割れた窓の散乱でした。犯罪を減らす為に、当時の市長がとった施策は徹底的に街を清掃し、綺麗にするということでした。犯罪対策や治安の強化をせずに、犯罪撲滅の為の清掃なんて効果があるわけないと当時のニューヨーク市民のほとんどが呆れ、笑いました。ところが、落書きを消し、落ちているゴミを拾い、割れた窓を直した結果、殺人・強盗などの犯罪が大幅に減少し、ニューヨークの治安は劇的に回復したのです。

小さなほころびを防ぐことは大きなほころびを予防するということなのです。

例えばこの割れ窓理論は会社に置き換えることもできます。

乱雑に物が散らかっていたり、掃除が行き届いていないオフィスで働いていると、イライラしたり攻撃的な部分が増長されやすくなるだけでなく、だらしない雰囲気は会社の秩序や風紀を乱します。小さなほころびを認める事は、無秩序を容認し、無秩序の中では人の理性よりも生存本能や攻撃性が高まりやすくなります。戦時下でルールを守って命を危険に晒すより、人を押しのけてでも逃げて生き延びたいと本能的な欲求が強くなるようなものです。

コミュニケーションと言うと、対面・対人のコミュニケーションばかりに気がいってしまいますが環境から受ける影響は少なくありません。

また自分を取り巻く人達からも大きな影響を受けます。
フリードリヒ・ニーチェの「善悪の彼岸」の一節です。

“怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ。”

良くない行いや邪な人達と付き合う事は、自分は違う、巻き込まれないと決意していても、だんだんとその世界へと引きずりこまれてしまう恐ろしさを警告する一文です。

以前、とてもさわやかな好青年の男性が居ました。外見はさわやかな俳優さんの様で、性格も外交的で明るくとても素敵な魅力に溢れていました。女性だけでなく、同性からも人気が高いだろうと感じる好青年でした。仕事のとあるプロジェクトで知り合った為、しばらくご一緒させていただきましたが、その仕事が終わり彼とも疎遠になりました。数年後、交流会か何かで再会をした時、余りの変貌ぶりに驚きを隠せませんでした。外見は変わらず、むしろ男っぷりが増して魅力的な外見になっていたにも関わらず、何というかまとっている雰囲気そのものが澱んでいたのです。会わなかった数年の間、彼に何があったのかは聞けず仕舞いでしたが、以前の明るく傍にいる人を照らす太陽の様な明るさは消え、何となく邪な闇の雰囲気を纏っていました。
その人自体は変わらずとも、その人を取り巻く人や経験がきっと雰囲気を変えてしまったのでしょう。

人が纏う雰囲気は自分が置かれている環境や取り巻いている人から大きな影響を受けます。身の回りを整理整頓し、邪な人と付き合わない様にすることはとても大切です。



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