How to be a Gentleman

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第3回
〜一期一会〜 富山編 心温まるもてなし、
富山の天ぷらといえば「天米」(てんよね)

「こちらでしばらくお待ちくださいね。」朗らかな笑顔で迎える女将の後ろでは、店主が一人もくもくと天ぷらを揚げていた。香ばしいゴマ油の匂いに包まれた店内は、お年寄りやサラリーマンで埋め尽くされていた。土曜のお昼過ぎだったこともあってかここ「天米」の店内は賑やかだ。
約30年前、父が富山の魚津市で勤務医をしていた頃の忘れられない味覚に、「天米」の天ぷらがあった。久しぶりの休日、存分に羽を伸ばすべく、家族で「雅樂倶」へ泊りに行くことになった。その途中、小腹を空かせた私達に「天米に行こう!!」と父が皆を誘ったのだった。

「天米」の歴史は長く、明治半ば前田米吉が東京神田で創業。米吉の「米」と天婦羅の「天」で「天米」と名付けたのが始まりだそうで、昭和32年富山魚津市文化町で開業。親子代々にわたり50年。今も尚、本場江戸前の味と日本海の新鮮なネタで伝統の味を受け継いでいる。

カウンターで揚げたての天ぷらと店主との会話を楽しむ醍醐味。「揚げたてが何より一番。でも、油も食材もこだわって一流のものを使っても、揚げる人によって全く違う味になりますね。その人の癖ですね。その人の癖が味に出るんですよ。」そう言いながら、1品1品、次々と季節の食材を揚げていく店主。まさに真剣勝負だ。エビアレルギーの私には、エビの代りに五朗島のさつまいもやユリ根を揚げてくれた。リクエストに「人参!」とオーダーすると、エビのかき揚げのような鮮やかな朱色をした千切りの人参が。ほのかに甘く、サクッと美味しかった。

千利休の「和敬静寂」を本義とし、「一期一会」の心持ちである事を最も大切にしている店主と女将。「天米」の天ぷらが美味しいのは勿論のことだが、ただ満腹にしてくれるだけではない、五感を満たす至福のときを味わわせてくれる。

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