大河ドラマ「八重の桜」の世界をめぐる

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第2回
パーフェクトな兄「覚馬」と才能ある科学者「尚之助」

綾瀬はるかさん演じる山本八重は、草食系男子など真っ青の鉄砲オタク女子でした。同年代の女の子たちが裁縫しながら女子トークしているのを横目に、射撃訓練ばかりしていました。
西島秀俊さん演じる十七才年上の覚馬に、鉄砲の使い方を教えてもらうのが何よりの楽しみだったのです。
そんな八重でしたから、同年代の男性にはまったく興味が持てませんでした。男性の方にしても、鉄砲オタク、銃マニアの女性は敬遠します。
同年代の女性の目からも、変わっていると思われていたことでしょう。

十代の八重は、会津若松で射撃訓練に熱中していましたが、ある日、八重より十才ほど年上の男性が江戸から訪ねてきます。
その名を川崎尚之助といいました。八重の最初の夫となる人物で、ドラマでは長谷川博己さんが演じます。

長谷川さんは、NHKのドラマ「セカンドバージン」では不倫に落ちる男性を、日本テレビの「家政婦のミタ」では優柔不断な父親を演じて、注目を浴びました。最近、人気急上昇な俳優さんですよね。
今回のドラマでは、ヒロインの夫という役所です。
いつも白い羽織を身にまとっていますので、何やら謎めいた雰囲気をかもし出しています。
武士は普段、黒や灰色など地味な色の服を着ていましたから、どうしても目立ちます。

川崎尚之助は実在の人物なのですが、その実像は現在もよくわかっていません。写真も残っていませんので、どんな顔をしていたのか、本当はどんな服装をしていたのかはご想像にお任せするしかないのですが、それにしてもいったい、どんな性格の男性だったのでしょう…?

長谷川博己さん演じる川崎尚之助は、会津の出身ではありません。
但馬国出石藩出身の武士でした。現在の兵庫県豊岡市で生まれたのです。
なぜ、兵庫県生まれの武士が福島の会津にやって来たのでしょうか。

その橋渡し役になったのが、八重の兄・山本覚馬でした。
覚馬は、会津藩のなかで優秀な侍として知られていました。
勉強もできて、スポーツも万能。そんな非の打ち所のない兄が、八重は自慢でした。
同年代の男性にまったく興味が持てなかったのも、身近にパーフェクトな男性がいたからでしょう。

覚馬が仕える会津藩も、その優秀さを認めていました。
ですから、江戸への遊学を特別に許しています。
江戸で三年の間、藩に役立つと思うことを自由に学ばせたのです。
それも、会津藩から特別手当が出ていました。会社から奨励金が出ているエリート候補生のような存在だったのです。
そして、江戸で学んだことを会津藩に役立たせようとしたわけです。

江戸では、西郷隆盛が出た薩摩藩、桂小五郎が出た長州藩、そして坂本龍馬が出た土佐藩など、他藩の藩士たちと広く親交を結んでいます。
江戸は全国から一流の人物が集まり、お互いが切磋琢磨する場所でした。
確かに覚馬は会津藩のなかでは優秀でしたが、もっと優秀な人物がいることを痛感することになります。

では、覚馬はどこで一流の人物と知り合いになったのでしょうか。
江戸には、異業種交流会のように人脈作りに役立つ場所があちこちにありました。
それは塾でした。義理の弟となる川崎尚之助とも、江戸の塾で知り合ったのです。

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