お取り寄せからみたニッポン

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第14回
石川県・極めて薄く美しい金沢箔

伝統工芸品から食品まで

金は、流行に左右されず、いつの時代も人を惹きつける価値と魅力がある。とはいえ、金の延べ棒とか金塊には縁がない…と思っていたら、思わぬところで見かけたことを思い出した。3月までやっていたNHKの朝の連続テレビ小説「カーネーション」で、主人公の糸子が金箔付きのカステラをもらってはしゃぐシーンがあったのだ。そういえば、キラキラした金箔入りの日本酒や、ふりかけにも金箔入りのものがある。金箔は食べられるのか、と検索してみたら、食品添加物としても認可されているらしい。最近は、スイーツやシート状のかつおぶしに金箔をあしらった製品まであるのだそうだ。

こうした製品に使われる金箔は、石川県・金沢市で生産され、金沢箔が国内シェアの98%以上を占めているという。
金箔は、金に少量の銀や銅を混ぜて合金を作り、それを非常に薄く延ばしたもの。純金より合金のほうが打ち延ばしやすく、適度な硬さと変形抵抗が与えられるという。また、金の純度が高いと黄金色、銀の量が多いと赤みは薄く、銅を加えると濃くなるという具合に、混ぜる配分で色味も変化させている。

翼のように海に突き出る能登半島がある石川県。金箔の生産が盛んなのは、その風土と文化による。まず、県の年間降水量が多く(第5位)多湿であること。西寄りの風が対馬暖流によって水蒸気を蓄えた雲となり、両白山地にぶつかって雨となる高湿な気候が、箔打ち作業に適しているのだという。
また、加賀百万石のお膝元で、蒔絵を施した金沢漆器、輪島塗や九谷焼など芸術的な伝統工芸品が生産され、それらの装飾に大量の金箔が使われていたこともあって、品質の良い金箔が生産されてきた。

歴史的には、いつから始まったかわからないぐらい古くから生産されていたらしい。戦国時代後半には、加賀藩主・前田利家が、豊臣秀吉の朝鮮出兵に際し、陣中から箔の製造を命じる書を送っていたというから16世紀末より前なのは確実だ。
江戸時代には、幕府が箔座を設けて箔の生産と販売を管理したため、藩での生産は一旦途絶えるが、城の修復や藩のために幕府から許可を得て製造が続けられた。明治維新後は、金座・銀座が廃止され、金箔打ちは大きく発展。大正時代には箔打ち機が開発されて、品質、生産量ともに国内一の産地となったそうだ。

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