お取り寄せからみたニッポン

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第21回
岡山県・国産の高田硯で書を楽しむ

硯の質によって墨の発色にも違いがでる

パソコンのメールばかりでなく、たまには和紙に筆で手紙でもしたためてみようと、学生時代に使っていた書道の道具をひっぱりだしてみた。墨汁は固まってしまっていたが、墨や筆はまだまだ使えそうだ。ところがなぜか、硯が見当たらない。そこでネットで探しているうち、高田硯という国産の硯を発見。気にいってしまった。

硯は、中国の文人が愛好した文房四宝のひとつ。文房四宝とは、紙・墨・筆・硯の4種の文房具のことで、中国旅行のお土産で、この四品をセットしたものを見かけることもある。現代でもノートや筆記具にこだわりを持つ人が多いのと同じように、古来人はそうした道具の作りや品質にこだわりをもっていたわけだ。

そうはいっても、硯は墨をするための道具なのだから、墨が良いならどんな硯でも良さそうに思える。しかし、良いワサビをおろすには鮫皮が一番といわれるのと同じように、墨をする硯の質によって墨の発色にも大きな違いがでるという。硯の石が柔らかすぎると、石も磨耗してその成分が墨に混じってしまうし、逆に硬くてつるつるの硯は墨がなかなかすれず、墨の発色も良くないのだとか。

墨は煤を香料と膠(動物性タンパク質)で固めたもの。水をつけた硯の表面で滑らせて墨をする。そこで重要なのが、おろし金の突起にあたる「鋒鋩」(ほうぼう=刃物の切っ先のこと)と呼ばれる石に含まれた粒子だ。鋒鋩の成分はさまざまだが、そうした粒子があることで、墨を細かく削り溶かすことができる。古来名硯と呼ばれる硯は、この粒子が理想的な強度や密度で並んでいて、そうした良い原石を高い技術を持った硯師が丁寧に加工して初めて、良質な硯となるのである。
硯には中国産の唐硯と国産の和硯がある。中国産の唐硯では、端渓硯(たんけいけん)や、歙州硯(きゅうじゅうけん)などが有名だが、日本産の和硯にも名品がある。山口県宇部市の赤間硯、宮城県石巻市の雄勝硯は、歴史も長く国の伝統工芸品の指定を受けている。雄勝硯は、硯の国内生産の9割近いシェアを占めていたが、2011年の東日本大震災の津波で多くの工場が被災してしまったという。和硯にはそのほか、滋賀県の高島硯、山梨県甲州の雨畑硯、高知県の土佐硯、長野県信州辰野町の竜渓硯などもある。それらと並んで岡山県の高田硯も、墨色が鮮明に出る良質な硯として、室町時代から文人墨客に愛されてきた。

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