“その時”では遅い相続の話

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第5回
不動産を共有相続すると、後々面倒なことになる

相続で遺産を分ける際に、悩ましい問題になりがちなのが不動産です。所有する不動産は自宅一軒のみという方は多いでしょう。たったひとつのマイホームをどうやって分けたらいいか。今回は、不動産の相続にはどのような問題があり、どのような分け方があるのかを説明します。さらに、分け方の一つである共有を選択した場合の見落としがちな落とし穴についても解説しましょう。

不動産の価格は一物百価といわれています。

不動産の価格にはさまざまな価格があり、一部百価ともいわれています。その代表例として、売買価格、公示価格、相続税評価額、固定資産税評価額がありますが、それらはほとんどの場合、違う価格になります。
また、実際に取り引きされる価格である売買価格は、売主、買主の事情などによって大きく左右され、不動産鑑定士などの専門家が評価する不動産鑑定評価額と異なることもあります。こうした実情を背景に、相続での遺産分割においては、不動産の評価をめぐって揉めることが多くあります。例えば、不動産を相続せずに、その相応分を被相続人が残した預貯金からもらいたいと希望する相続人が、「もっと高く売れるはず」と主張し、不動産の相続を希望する別の相続人は、「そんなに高くは売れない」と反論する、といった具合です。

不動産の分け方には4つの方法がある。

問題の火種は不動産の評価だけではありません。物理的に自宅などの不動産は、簡単には分けることはできません。妻が台所、長男は和室、次男は洋室というわけにいきません。不動産は同じものが2つとないので、平等に分けることはきわめて困難で、揉めやすくなるのです。
それでは、不動産は現実にはどのように分けられているかについて説明しましょう。一般に、不動産を分ける方法は、4つあります。現物分割、換価分割、代償分割、共有です。それぞれの考え方を下の図表に示しました。自宅のように物理的に分けることができず、住んでいる人がいる場合には、現物分割や換価分割は現実的でないため、とりあえず一番平等で簡単な共有で分け合うという人が多いのが現実です。しかし、共有には問題点があります。

不動産の共有で、仲良く分けることになるでしょうか?
問題を先送りにし、大きくするだけです。

その問題点とは、売却や建て替えをするときは、通常、全員の合意が必要になるということです。そのため、売りたいのに売れなかったり、建て替えたいのにそれができなかったりすることがあります。
さらに、共有者に相続が発生すると、その配偶者やその子どもが相続することになり、共有者の人数が増えてしまうのです。いとこ同士が共有者になる可能性もあります。こうなると売却や建て替えをしたくても、その話し合いすら難しくなってしまうでしょう。
このように共有で分けるということは問題を先送りするものですから、代償分割の実現性も考慮するなどして、不動産の分け方は、前もって考えておいたほうがいいのです。

【図表】不動産の4つの分け方

なお、本文は特定の商品などの勧誘を目的とするものではなく、
文中の意見にあたる部分は筆者の見解であり、三菱UFJ信託銀行を代表するものではありません。

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