松本すみ子の「@シニア」

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第22回
65歳まで再雇用って、幸せなんだろうか

希望する人は皆、65歳まで働ける制度

また、改定高齢者雇用安定法が改正されました。今回の改正のポイントは、希望者全員が65歳まで働けるように、企業に再雇用を義務付けたものです。経過措置はあるものの、平成25(2013)年4月から施行されます。
“また”と書いたのは、平成16(2004)年にも改正されているからです。その時の主要改正点は「65歳までの雇用を確保するため、事業主は、①定年の引上げ、②継続雇用制度の導入、③定年の定めの廃止、のいずれかの措置を講じなければならない」というものでした。これにより、大企業を中心に定年退職者の再雇用制度が拡大しました。
では、今回との違いは何かです。「希望者全員が」という部分に注目してください。前回の改定では「②継続雇用制度の導入」の部分には(労使協定により基準を定めた場合は、 希望者全員を対象としない制度も可)というただし書きが付いていました。つまり、労使協定があれば、再就職を希望したとしても、勤務実績や業績などを理由に採用しないこともある、それでも問題はなかったのです。
しかし、今回の改定で希望者の再雇用は義務となりました。「ああ、よかった!これで年金満額受給まで首がつながった」と喜ぶ人がたくさんいるんでしょうね。

◆厚生老齢年金の支給開始年齢


いうまでもなく、高齢者雇用安定法の改定は2007年から続く団塊世代の大量退職への対応策でした。団塊の世代から年金受給年齢は段階的に先延ばしになり、団塊男性は64歳にならないと全額受給とはなりません(図参照)。その後の世代は65歳からになります。
60歳の定年から65歳までの収入のブランク期間をどのように生きていくか、これは定年者だけでなく、雇用されている者にとっては生きる基本ともいえる課題です。その問題を解決するために繰り出したのが改正高齢者雇用安定法です。いわば、見せかけの定年延長を実現したといえるのかもしれません。

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