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第6回
〈慢性中耳炎〉 予防の決め手は、急性中耳炎と鼻の病気をきちんと治すこと

慢性中耳炎のほとんどは、急性中耳炎から移行して起こる

子どもがよくかかるのが急性中耳炎(急性化膿性中耳炎)。風邪をひいたあとにのどや鼻にいるウイルスや細菌が、耳管を通って中耳に感染して炎症を起こし、膿がたまる。副鼻腔炎など鼻の粘膜に炎症を起こす病気が引き金となる場合もある。

さらに、急性中耳炎にかかった子どものうち、約1割が滲出性中耳炎に移行する。これは急性中耳炎が長引いたことによって、耳管の粘膜まで炎症を起こして腫れ、液体が滲みだしてくるのに加え、中耳の内圧が下がって、鼓膜がへこむ病気だ。鼓膜の振動に支障をきたすため「耳が詰まる、軽い難聴」の症状が出るが、子どもが自分から難聴を訴えることはめったになく、「呼んでも返事をしない」などで、周囲の人が気づくケースが多い。

治療方法には、鼓膜に針を刺して滲出液を抜く「鼓膜穿刺」のほか、鼻孔から管を挿入して耳管に空気を送り込む「耳管通気療法」、鼓膜を切開してチューブを長期間入れておく「チューブ留置療法」などがあるが、いずれも滲出液を排出して、中耳を乾かすのが基本。自然に治る確率が高い病気ではあるが、治りきらないまま放置するのは禁物。何度も繰り返すのもよくない。慢性中耳炎のほとんどは、急性中耳炎から移行して起こるからだ。

タイプは3種類 怖いのは真珠腫性中耳炎

慢性中耳炎は、病気の起こる仕組みなどによって大きく「穿孔(せんこう)性中耳炎」「癒着(ゆちゃく)性中耳炎」「真珠腫(しんじゅしゅ)性中耳炎」の3タイプに分類される。

急性中耳炎や滲出性中耳炎による鼓膜の孔が、塞がらずに起こるのが「穿孔性中耳炎」。症状としては、難聴や耳だれが起こる。

滲出性中耳炎に引き続いて起こり、鼓膜がへこんで耳小骨が吸収されるのが「癒着性中耳炎」。かなり強い難聴が起こるが、耳だれや痛みなどの症状はあまりない。真珠腫性中耳炎より悪性度は低い。

上記の2タイプと比較して、発症頻度は少ないが、重い合併症を招くのが「真珠腫性中耳炎」だ。

「真珠腫性中耳炎は、鼓膜の一部が中耳側にへこんで袋状になり、耳垢などが溜って真珠のような白い塊(=真珠腫)ができる病気です。虫歯と同じように周囲に炎症を起こすため、進行すると骨や神経が破壊され、めまいや顔面神経麻痺、髄膜炎、脳膿瘍(のうのうよう)などの合併症を引き起こします」(東京慈恵会医科大学病院の森山寛医師)。

真珠腫性中耳炎の自覚症状は、悪臭を伴う耳だれと難聴だが、初期のころは虫歯と違って症状がほとんど出ないため、長期間放置して、悪化させてから受診する人が多いという。

「子どものころ、急性中耳炎をやった人は、ちょっとでも耳がじくじくしたり、聞こえが悪いと感じたら、早めに受診することが大切です」(同)

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