名医に聞く

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第5回
〈子宮がん〉
予防可能な子宮頸がんと
急増している子宮体がんの2種類

子宮頸がんはワクチン接種で7割近くが予防できる

子宮がんには「子宮頸がん」と「子宮体がん」の2種類がある。

子宮頸がんは子宮の入り口(頸部)に、子宮体がんは子宮内膜にできるがんだが、両者はできる場所が違うだけでなく、原因からして全く異なる。

「子宮頸がんの原因はヒト・パピローマウイルス(HPV)の感染です。HPVはごくありふれたウイルスで、性交渉の経験があれば、ほとんどの女性が一度は感染するといわれ、特に10代から20代の若い女性では高頻度に感染が見られます。インフルエンザなどと同じように予防ワクチンが存在し、接種すれば70%近くは予防できるだろうといわれています。中1から高1の娘さんは今年の3月から公費補助で受けられるようになりましたから、ぜひ接種してほしいと思います」

と上坊敏子医師(社会保険相模野病院・婦人科腫瘍センター長)は語る。

HPVは150種類ぐらいもあり、そのうちがんに関係するのは15種類くらい、予防ワクチンがあるのはその中の16型と18型の2種類だけだ。

「この2種類が約70%の子宮頸がんの原因になっているわけですが、裏返すと、予防接種をしても30%は予防できないということになりますね。ですから子宮頸がんにならないためには、性交渉開始前にワクチンを接種することに加えて、定期的な検診でがんになる前の細胞の異常(異形成)を発見し、がんへ進行する前に退治するという2つの予防手段が必要です」(同)

16型と18型HPVが原因のがんが、若い世代では中高齢層より多い上に、16型に感染すると、異形成という前がん状態への進行が速いという。しかも「早期がんは無症状」、「発生年齢が体がんより若年」、「20代、30代の若年症例が急増している」という特徴がある。

「そういう意味でも、若い世代は予防接種を受けるべきです」(同)

また、子宮頸がんの検査には、「細胞診」「HPV検査」の2種類があり、両方とも子宮の入り口(頸部)の細胞を採取して検査する。同時に検査できるし苦痛もない。欧米の女性は、大人になったら子宮頸がんの検査を受けるよう教育を受けているため、ほとんどの女性が定期検的に検診を受けている。ところが日本の女性は24.5%(2009年)しか検査を受けておらず、子宮頸がんで亡くなる女性は年間約3500人(2008年)にもおよぶ。ワクチン接種と検診を併用すればほぼ完全に予防できるのだから、なんとも悔しい。子宮頸がんについては、予防こそが最善の治療と言えるだろう。

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