名医に聞く

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第23回
ED(勃起不全)薬で容易に治療可能。80代でも大丈夫

バイアグラといえば、いわゆる「腹上死(ふくじょうし)」が話題になることがあるが、心臓等への負担はどうなのだろう。

「バイアグラを飲んでいる10万人ぐらいと、飲んでいない20万人ぐらいを比べると、バイアグラを飲んでいる人の方が、心筋梗塞(こうそく)、脳溢血(いっけつ)などで死ぬ人は少ないというデータがあります。身体にいいとまではいえないにしても、服用によるリスクはないと考えていいでしょう。
ED治療薬で一番気をつけなくてはならいのは、ニトログリセリンのような、飲み合わせの悪い薬と一緒に服用しないようにすることです」(同)

心疾患でニトログリセリンを服用せざるをえないなどの理由でED治療薬を服用できない場合には、陰茎根部にリングを装着して勃起を維持する「陰圧式勃起補助具」、陰茎に薬を注射して勃起させる「陰茎海綿体注射」、人口陰茎(プロステーシス)を埋め込む「陰茎プロステーシス」といった治療法がある。

EDは大病の予兆。早めの対策で予防したい

さて、ED治療には、EDそのものの治療とは別に、注意を喚起しておいたほうがよい側面がある。それは大病との関係だ。

「心筋梗塞になった人を調べると、その数年前からEDになったというデータがあります。陰茎に血液を送る血管は直径1mmぐらい、対して心臓に血液を送る冠状動脈の血管は直径3mmぐらい。動脈硬化は細い血管から詰まってくるので、EDになるということは心疾患の予兆とも考えられるのです。
中高年でEDになった人は、できれば心臓の検査を受けて、将来の心筋梗塞を予防していただきたいと思います」(同)

それはつまり、EDになったら即、循環器の専門医を受診するべきということなのだろうか。

「残念ながら、日本ではまだそこまで状況が整ってはいません。EDも、それらの病気も数年かけて徐々に進行するものですから、自覚した際には自衛手段として、会社の産業医や人間ドックで健康チェックを受け、そこで循環器の異常が発見されたら専門医に紹介してもらうことを提案します。特に、高血圧や喫煙などの心血管疾患の危険因子を持つ人は気をつけてください」(同)

男性にとってはショックなEDも、大病の予兆として見逃さなければ、命を守るサインになる。
加齢のせいと放置せず、専門医を受診してみてはどうだろう。

名医のプロフィール

ED(勃起不全)の名医

丸茂健(まるもけん)

東京歯科大学市川総合病院 泌尿器科学教授
1976年慶應義塾大学医学部卒後訓練医(泌尿器科学)。ドイツ連邦共和国Würzburg(ヴュルツブルク)大学、東京電力病院泌尿器科科長、慶應義塾大学医学部助教授(泌尿器科学)を経て、2005年より東京歯科大学市川総合病院教授(泌尿器科学)。現在に至る。
日本泌尿器科学会会員、日本性機能学会会員(2010年8月より理事長)、腎癌研究会会員、日本医師会会員。
おもな著書は、『男の病気を治す本―前立腺肥大・前立腺がん・勃起障害』(テーミス 2005年)、『男性不妊を治す―不妊の原因は女性だけではない』(新星出版社 1997年)。

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