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第25回
アトピー性皮膚炎。正しく治療すればほとんどの人は改善し、病気と上手に付き合えるようになる

原因はアレルギーだけではない。多因子へのアプローチが必要

湿疹やかゆみを伴い、よくなったり、悪くなったりを繰り返しながら慢性的に続く難治性の病気「アトピー性皮膚炎」。
20歳以下の日本人の、およそ10人に1人がアトピー性皮膚炎であると推測されている。

かつては乳幼児期特有の病気で、「大人になればほとんどが治る」といわれていたが、 実際はその年齢になっても治らない患者や、一度治っても成人してから再発する患者もいる。

死に至ることはないが、死を選ばせかねないつらい病気だ。しかし、
「正しく治療すればほとんどの人は改善し、病気と上手に付き合えるようになります」と江藤隆史医師(東京逓信(ていしん)病院皮膚科部長)は言う。

実際、この数年で、いろいろなことが解明され、治療法は進化している。
たとえば、かつて「アトピー性皮膚炎=アレルギー」と考えられていたが、現在では、皮膚のバリア機能低下によるドライスキンをベースに、アレルギー反応やさまざまな刺激反応によって発症すると理解されるようになった。

また「アトピー体質」には、皮膚のバリア機能にかかわるフィラグリン遺伝子の異常が関与していることなどが分かってきている。
「病因や悪化因子は、年齢によっても変化し、実にさまざまです。環境、物理的な刺激、ストレスなど多因子ですから、1つの因子だけを排除する治療方針では、決して解決にはつながらないことを覚えておいてください」

患者やその家族は、「〇〇がアレルゲンです」と言われると、必死になって排除しようとするが、「それは土台無理な話」と江藤医師。
「たとえば、生活環境から完全にダニをなくすことはできません。もし入院して無菌室などの特殊な環境で改善したとしても、一般の生活に戻ったら症状がぶりかえしてしまうのであれば、治ったことにはならない。
治療目標は、完全に症状がなくなることではなく、アトピー性皮膚炎があっても、みんなと同じように楽しく幸せな人生を送っていけるようにすることだと、私は思います」

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