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第14回
〈糖尿病と心血管検査〉 命にかかわる合併症の進行 症状がなくても検査は必要!

血糖値はコントロールできても合併症は避けられない

一般的に糖尿病は、血糖値が高くなる病気と考えられているが、聖路加国際病院・心血管センターの新沼廣幸医師は「むしろ血管病という言い方をしたほうがいい」と語る。
なぜなら、血糖値が高くなることで、さまざまな問題が発生する“現場”は血管だからだ。
たとえば糖尿病の3大合併症といえば神経障害、網膜症、腎症だが、これらの臓器はいずれも、非常に細かい血管の密集地帯。糖尿病とはまず、そうした細かい血管が切れたり詰まったりすることで、さまざまな障害が引き起こされる病気なのである。

さらに血管といえば、忘れてはならないのが冠動脈だ。

冠動脈は心臓の周りを取り囲むように走っている細い動脈で、心臓の筋肉に酸素と栄養を与える重要な存在。糖尿病を長く患っていると、この冠動脈をはじめとして、頸動脈や手足の動脈などに動脈硬化が起きてくる。

「初期のころは血管の表面がでこぼこするだけですが、進行してくると粥腫(じゅくしゅ=プラーク)と呼ばれるお粥状のかたまりができて、さらに進むと血管内に石灰化といってカルシウムが溜まったり、線維化といって硬くなってきたりします。それらによって血管の90%が詰まってしまうなんてこともあります。狭心症や心筋梗塞などが起きてくるわけです」(新沼医師)

でも、血糖値をきちんとコントロールしていれば大丈夫でしょ?
と多くの糖尿病患者は、希望的誤解を抱きがちだが、それは甘いようだ。

「残念ながら糖尿病は、治療をきちんとやっていても、自覚症状がなかったとしても、合併症を防ぐには十分ではないし、動脈硬化も進行してしまいます。
冠動脈の例でいえば、当院で、患者さん200人を調べたところでは、糖尿病になって10年経つと、ほとんどの患者さんの冠動脈のなかにプラークができ、15年経つと、それが高度な狭窄に進行し、カテーテル治療やバイパス治療が必要になってしまいました」(新沼医師)

通院治療をしていても動脈硬化が進んでしまうとは、かなりショックな話だが。

「糖尿病の患者さんはぎりぎりにならないと受診されない場合が多いのですが、我々としては、命だけは助かるけどもう動けないとか、足を切断しなければならないという状態になる前になんとかしたい。
理想とすれば、もっともっと早い段階で見つけてあげて、合併症がひどくならないように治療する。もしくは、予防できれば一番いいわけです」(新沼医師)

そこで聖路加国際病院では最新鋭の検査機材を導入し、心臓のスクリーニング外来を行っている。この外来は、「胸が痛い」「動悸がする」などの自覚症状がない段階で、心臓の精密な検査をする専門の外来で、年間およそ2000件もの心臓CT検査を行っているという。

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