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第31回
変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)。安易な手術は避け、運動療法での改善が大事

治療はまず、保存的治療として、薬物療法、運動療法、物理療法の3つを行う。
薬物療法は、痛み止めの内服薬や外用薬を使ったり、膝関節内にヒアルロン酸の注射などをする。
運動療法は、大腿(たい)四頭筋強化訓練、関節可動域改善訓練など。
膝にかかる負担を減らすための減量指導も大切だ。
物理療法は、膝を温めたりする。そのほか、足底板や膝装具を作成することもある。このような治療でも、病気が進行し治らない場合は、手術療法が検討される。
手術療法には関節鏡(内視鏡)手術、高位脛骨(けいこつ)骨切り術(骨を切って変形を矯正する)、人工膝関節置換術などがある。

「私の場合は、手術は最後の手段と考えています。
まずは、保存的な治療をしっかりと行うことが大事です。
変形性膝関節症で継続して10年以上見た患者さんで、手術に至った患者さんは一人しか記憶にありません。早い段階から保存的治療ができれば、手術はほぼ避けられます」
と宗田医師は力説する。
整形外科ではあるが、手術はできるだけ避け、痛みのメカニズムを考慮した薬物療法、運動療法に力を入れているのだ。
「ストレッチなどの運動療法は、一番効果があって、一番安上がりだと思います」

そしていよいよ手術となった場合に、最も信頼しているのは人工関節置換術。
「手術の患者さんは、来院する段階で、既に手術するしかないほど悪くなった状態でお見えになります。
もっと早く来てくれれば、手術しないで済んだのに…と、残念に思いますよ」

宗田医師のもとには、他の病院で不必要な手術を受け、逆に悪化させてしまった患者も数多く訪れるという。
「個人的には保存治療がちゃんとできない医師ほど、安易に手術を勧めるのではないかと思っています。
患者さんにとっては、切らずに済むなら切らないのが一番。
私は保存的治療に自信を持っています」

名医のプロフィール

変形性膝関節症の名医

宗田大(むねた たけし)

東京医科歯科大学医学部 大学院 運動器外科学分野 教授
1979年東京医科歯科大学医学部卒業。1990年米国ミネソタ大学整形外科学教室留学(リサーチフェロー)、1993年東京医科歯科大学整形外科講師、2000年東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科運動機能再建学教授、2004年運動機能再建学より運動器外科学に分野名を変更、現在に至る。
スポーツ医学における膝関節の第一人者として、多くのプロスポーツ選手の治療も行っている。

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