文化とアートのある暮らし

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第14回
「ストリングラフィの音の世界」

来る日も来る日も雨、雨! 洗濯物が乾かず肌寒い9月が続きました。それでも一時の寒さだろうと思って夏服を仕舞わずにおいたのに、いつのまにか本格的に秋に突入した気がします。

昨日、ストリングラフィという楽器の音を聞いてきました。
ストリングラフィとは、1992年に作曲家の水嶋一江さんによって発案されたオリジナル楽器とその演奏スタイルの総称であり、水嶋さんによってネーミングされました。楽器でありながら、空間に張り巡らせた糸が美術作品のように印象的で、糸を意味する“String”(“the strings”は弦楽器を意味します)と、図表、グラフィックアートの作品を意味する“Graphic”の2つの言葉を合わせたものだそうです。なんと糸は絹糸によるもの!


かつて「糸電話」が、声の振動を伝えて電話のように離れた相手と話ができることを理科の授業で習ったことを思いだしました。糸は音を発するための振動を伝えることができるのですね。ストリングラフィも、糸電話の原理を応用しているようで、つくりは絹糸の両端に紙コップを取りつけたもので非常にシンプルなもの。演奏者が手で擦ったりはじいたりして音を出し、演奏が行なわれます。

ピンと張られた絹糸は、一本ずつドレミファソラシドに調弦されていて、1セット15本~22本で、ソプラノ、アルト、ベースの3セットが基本となるようで、糸の長さは一番短いもので約1m、長いものは約15mも!
会場自体が巨大な弦楽器のようにセッティングされることもあり、今回私が拝見したものはまさに楽器の内部に客席があるような巨大なものでした。弦楽器のように持続する音やビブラートが効いているシーンもあり、絹糸の音を大音響で体験!

その日は「繭の色の演奏会」という演奏会タイトルで、聞き馴染みのある、ヴィヴァルディの「春」やモーツアルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、童謡「大きな古時計」、一青窈さんの「ハナミズキ」などを絹糸によって演奏されたあと、水嶋さんによって作曲されたオリジナル作品「森の記憶」もお聞きすることができました。水嶋さんの作品は、大自然の森の中にいるかのような作風で、野鳥の鳴き声、風に吹かれて木が揺れるような音、肉食動物の声、様々な音が具体的に想像でき、静かな音から刺激のある音まで豊かな響きが感じられました。そしてついには「ゲゲゲの鬼太郎」をストリングラフィのアレンジで聞くことまででき、お化けの通る時の妙な効果音はもちろん、音楽的なハーモニー以外の遊びのある音が所々に工夫されていて楽しめました。



右前から主宰の水嶋一江さん、鈴木モモさん、後ろが蓮見郁子さん




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