文化とアートのある暮らし

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第17回
「1年を締めくくる」

お正月の音楽といえば、多くの方が宮城道雄さんの「春の海」を想像するのではないでしょうか。
宮城道雄さんは、1894年(明治27年)~ 1956年(昭和31年)に活躍した作曲家・箏曲家ですが、クラシック音楽の影響を多大に受け、構成感やリズム感を明確にし、また主旋律と伴奏を対比させたりと、このような宮城氏のご功績により邦楽の世界がクラシック音楽と馴染んでいきました。それはちょうど洋文化が、新しい時代を迎えようとしていた日本に馴染んでいく時期と重なるのではないでしょうか。あえて検索しながら試聴をしなくても、新年を迎えればテレビで放送されているのが想像できるほどに日本にとっての新年は「春の海」が象徴的です。

師走は慌ただしいとは言いますが、好きなことをする時間はありますか?そして長く続けている趣味はありますでしょうか?
自分が好きな事を続ける才能は誰にでもあります。そのきっかけの一つが憧れではないでしょうか。出逢いによって憧れが芽生え、「好き」に繋がることもありますし、もともと好きなことの「先」にある目指す世界を将来に描き、憧れの対象にすることもあるでしょう。
ただ、憧れは自分には叶わない地点がありますが、「好き」は目指す世界がなくとも「好き」ということが才能になります。とにかく好きであること。好きこそものの上手なれ、という言葉が表すように、それは才能であるということです。
社会的に様々な事情があって一つのことが続けられなくなる試練が訪れることがありますが、たとえいろんな事情で離れてしまったことがあっても、記憶があればまた好きな趣味をする時間を過ごすことができます。
「好き」がその歴史を知り、理論に繋がる、この循環したかのような自分のエピソードを思い出してコラムに書いて見ましたが、四季を描く音楽に触れイベントを楽しむ贅沢、そのワクワクを感じることで、「好き」から多大な事を学ぶことができた気がします。

街の景色がもみの木から松の木に変わっていく時期ですが、キリスト生誕と新年を迎える「お祝いごと」は、同じお祝いでも空気が違うのは不思議です。
お正月の空気のどこか静かな感じ、1年の周期を越して、数時間後に迎えた新年の時間の流れのようなものを、存分に浴びて過ごしたいものです。

明年も皆様にとって素晴らしい一年になりますように。

(*)3度…ピアノ鍵盤上で基本となるドの音から単純に数えて3つめの音でミを指す。
また、5度上はソになる。
(さらに詳しい音程の意味についてはウィキペディア https://ja.wikipedia.org/wiki/音程 を参照。)
(*)十二平均律…1オクターヴを12等分した音律。現在ピアノがモデルとなっている。


生駒山山頂より撮影

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