写真家・秋野深のやさしい旅のフォトレッスン

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第56回
表情豊かなサルの様子がこんなにも間近に ~長野県・地獄谷野猿公苑~

長野県・志賀高原の麓に位置する地獄谷野猿公苑。温泉に入る猿が間近に見られるところとしてテレビなどでご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。私は何度も行ったことがあるのですが、日によっては外国人観光客の方が日本人より多いのでは、というくらい海外の方にも人気の場所です。なんでも、1998年の長野冬季オリンピックの取材で来日した各国のマスコミが報道したことがきっかけで、一気に海外での知名度が上がったとのこと。

初めて訪れた時には、サルの様々な表情を本当に間近に見ることができるので、私もさすがに驚きました! 何しろ、やってきた人間の存在などまるで意に介していない様子で、どのサルも思い思いに過ごしているのです。
(※あまりじっと見つめたりすると、サルにとっては「威嚇行為」と受け取られかねないそうなのでご注意ください。)

■思い切ってアップで写してみることで、よりインパクトのある写真に!

温泉に入ったり、昼寝をしたり、仲間と毛づくろいをしたり【写真1】、小ザル同士が喧嘩をしたり・・・と、そんな光景が周囲で繰り広げられ、まるでサルの生活空間にお邪魔させていただいたような感覚に陥ります。

【写真1】
【写真1】

これから初夏あたりまでは出産シーズンで、小さな赤ちゃんのサルを抱き抱えたお母さんザルの姿を目にすることもできます。【写真2】

【写真2】
【写真2】

せっかく様々な表情を見せてくれるサルに近づくことができるのですから、しっかりとその表情を捉えたいですよね。そのような場合は、撮影する時に、とにかく思い切ってアップにしてみてください。そうすると、写真が一気にインパクトのあるものになります。

【写真3】も、そんなふうにして、自分の受けた印象がよりダイレクトに伝わるように・・・と、着目したところを思い切ってアップにして撮影した一枚です。もちろん、この捉え方ではサルの姿勢や周囲の状況などは具体的に伝わりません。けれども、この時、サルの真横にいる私が思わずハッとさせられたのは、少しうつむいて一点を見つめて何か考え事をしているような、もの想いにふけっているような、このサルの眼差しと横顔だったのです。

【写真3】
【写真3】

もし、体全体がはみ出さないような捉え方をしていたら、その写真から受けるこのサルの眼差しや横顔の印象はより弱いものになっていたでしょう。

日頃から何を撮影する時にも、無意識のうちに「画面からはみ出さないように全体を写さなければ」と思ってしまいやすい方ほど、最初は「目にとまった部分だけをとにかくアップにしてみる」くらいの意識でやってみるとよいでしょう。そうすると、いつもの自分の写真とは違う印象の写真になったりするものです。

大切なのは、思い切りのよさです。動物や人を撮るときはなおさらです。せっかくの素晴らしい表情は次の瞬間には変わってしまい、二度と巡り会えないかもしれないのです!

思い切りよく捉え方を決めて、どんどん挑戦してみてください!

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