写真家・秋野深のやさしい旅のフォトレッスン

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第34回
緑のじゅうたん・チャツボミゴケ ~群馬県・奥草津~

草津といえば、日本で最も知名度の高い名湯の地。そこから少し山奥深く入った群馬県中之条町の六合(くに)地区というところに、チャツボミゴケという珍しいコケの生息地があります。
もちろん普通のコケならば、渓流沿いや森の中でいくらでも目にする機会があります。ところが、このチャツボミゴケは、強酸性の水辺を好み、広く生息するところは全国的にも群馬の奥草津と熊本の阿蘇だけなんだそうです。どちらも硫黄成分の水が豊富な温泉地ですね。

■チャツボミゴケは、まるでふかふかとした緑のじゅうたん!

【写真1】
【写真1】

チャツボミゴケは、うっそうとしたところではなく、日の光がしっかりとあたる場所に広がります。しかも普通のコケよりも厚みがあって、まるでじゅうたんのようなのです。コケのそばを流れている水は温泉です。湯気が立つほどではありませんが、温くわずかに硫黄の臭いがします。夏から秋にかけて明るい緑のじゅうたんが水辺を埋め尽くす様は、美しくもあり、なんだか不思議な光景でもあります。
写真で比較的広い範囲を捉えて、コケの緑色のインパクトを出したい場合は、ただ全体を撮るのではなく、【写真1】のように、画面全体に緑色を散りばめられるような捉え方を心がけるとよいでしょう。広く捉えようとすると、どうしても緑色以外のものも入ってきますが、あまり画面内で偏らないように全体に緑が広がるように構図を選ぶことで、写真を見た時の緑のインパクトが強まります。

■緑色以外の色を少し含めることで緑色を強調!

【写真2】
【写真2】

コケの緑色とは別の色のものを少し含めることで、その対比で緑色を強調することもできます。【写真2】では、白っぽい水の流れを少し含めることで、緑色を際立たせています。もしここに他にも様々な色の被写体が入ってくると、写真としてカラフルにはなりますが、それでは、緑が目立つ捉え方ではなくなってしまいます。ポイントは、シンプルに別の色を少し入れることです。

今回のレッスンは、色彩にひかれて写真を撮影するときには共通して使えます。どのようにして写真の中でその色彩を目立たせるかがポイントになります。できるだけ画面を1つの色で統一する発想と、別の色を少し入れて対比させる発想の両方を選択肢として持っておくことが理想です。ぜひ、そうして同じ場所でも写真にバリエーションをつけて撮影してみてくだい!

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