写真家・秋野深のやさしい旅のフォトレッスン

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第38回
氷に覆われた神秘の世界 ~栃木県・雲竜渓谷~

【写真1】
【写真1】

全てが氷に覆われ、巨大な氷柱が垂れ下がる厳冬の峡谷・・・。【写真1】だけを見ると、一体どんな極寒の北の辺境地だろうと思ってしまいそうですが、実は、関東の栃木県。しかも世界遺産で有名な日光東照宮から直線距離で5キロほどしか離れていない、雲竜渓谷というところなのです。

■迫力と繊細さが共存する美しい氷の世界!

冬でなければ、車が通る道を歩くこと2時間強。【写真2】のように多少雪が積もっている時はまだ歩きやすいのですが、日によっては凍結していて滑り止め無しには歩けないことも。
【写真2】
【写真2】
峡谷へ入ると、そこは一面の氷の世界。大きな氷柱が立ち並ぶ光景は、遠目には一瞬、巨大な建造物に見えたりすることもあります。【写真3】
【写真3】
【写真3】
その一方で、足元をよく観察してみると、そこかしこに繊細な彫刻作品のような氷の造形を見ることができます。【写真4】
【写真4】
【写真4】
自然が作り出すものは本当に不思議ですね。しかも、その時の気温次第で氷は刻々とその形を変えてゆくのですから。

峡谷の水の流れが凍ってしまうくらいなので、気温はもちろん氷点下。でも、実際に峡谷の中にいると、日向か日陰か、風があるかないかで体感温度はかなり違ってきます。
日向を歩いている時には、空気の冷たさが心地よく感じられるのですが、いったん日陰に入ると、手袋を3枚重ねてもまだ指先がかじかんできたりするくらいです。
防寒対策は言うまでもなく大切ですが、こういう場所では、分厚い上着などを着て暖かくしておくのではなく、着たり脱いだりこまめに調節できるように、重ね着が有効です。

■氷や雪の写真は、少し明るめに撮影するくらいがちょうどいい!

氷や雪は、とても反射の強い被写体です。日差しがなくても、スキー場で眩しく感じたり、思いのほか日焼けをしたり・・・といった経験をお持ちの方は多いはずです。
誤解を恐れずにシンプルに言ってしまうと、カメラも、実は氷や雪を前にすると眩しく感じているのです。
そのため、写真を撮影するときにカメラは光を抑えてしまい、少し暗めの写真になって、雪や氷が灰色っぽく写ってしまうことがよくあります。これは、カメラの故障などではなく、カメラの自然な反応です。そこで、雪の白さや氷の輝きをしっかり表現したい時には、明るさ調整をして、あえて明るめに写してあげる必要があります。
実際には、雪や氷以外に写している被写体の影響もあるので、あくまでケースバイケースで一概には言えませんが、一面の銀世界で写真を撮影する時には気に留めておいたほうがよいポイントです。

今シーズンの冬は、各地から例年より早く積雪のニュースが届いているようですね。
実は私は寒さが大の苦手なのですが(笑)、氷や雪の造形美に惹かれて、撮影に出かけています。
皆様も、しっかりと防寒対策をして、冬ならではの撮影に挑戦してみてください!

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