写真家・秋野深のやさしい旅のフォトレッスン

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第14回
夜景やイルミネーションの美しさを上手に表現しよう!

紅葉シーズンも一部の地域を残すのみとなり、少しずつクリスマス・年末年始の足音が聞こえてくる季節になりました。きっといろいろなところでこれからイルミネーションが始まることでしょう。日に日に寒さは増していきますが、湿度が低く空気が澄んでいる時期ですので、街の夜景やイルミネーションの灯りがより美しく感じられてきます。
今回のレッスンでは、そんな夜景やイルミネーションの美しさや鮮やかさを写真で上手に表現するための捉え方の基本をお伝えします。

■見た目の印象ではあんなにきれいだったのに・・・

夜景やイルミネーションは、私たちの目にとても鮮やかに感じられますよね。日が暮れて自然光がない中で目にするだけにインパクトが強く、夜景が見渡せるところやイルミネーション会場では思わず歓声を上げながら撮影をしている方々をよくみかけます。
ところが、撮影した写真を見てみると、あんなにきれいだったのに写真ではそれが表現できているとは思えない・・・というご経験はないでしょうか。
細かい技術や設定の話はさておき、よくありがちなのは、写真では明るさや鮮やかさが感じられないというケースです。確かにきらびやかな夜景やイルミネーションを写したはずなのに、その写真から受ける印象は、なんだかちょっと寂しい・・・ということはよくあることです。
例えば【写真1】では手前の噴水全体が美しくライトアップされていて、その奥の建物もガラス張りで室内の明かりがよく見えるため、その場で見た場合、受ける印象はとても明るく鮮やかです。ところが、この写真からはそれがインパクトを持って伝わるとはいえません。

【写真1】
【写真1】
【写真2】
【写真2】

■写真の中の暗い部分にも配慮を!

【写真1】が印象として少し寂しげなのは、写真の中に暗い部分が広く写し込まれているからです。そのため、明るい部分の存在感が、どうしてもポツンとした控えめなものになってしまうのです。撮影する人の心理としては、ライトアップされた明るい噴水が目の前にあるので、それを全て1枚の写真に含めてしまおうとしがちです。しかしその結果、おそらくはあまり意識していない周囲の暗い部分を結構広めに取り込んでしまっているのです。

この噴水を、きれいだと思って撮影しているのに、その被写体の一部をカットしてしまうのはもったいないと感じる方も多いかもしれません。しかし、写真の印象というのは常に写真全体から受けるものです。暗い部分が多くては、写真としてどうしても明るさは強くは感じられないということになってしまいます。
【写真2】は、【写真1】と立ち位置は同じで、シンプルにアップで撮影したものです。写真全体ができるだけ明るい部分で埋められるように、暗い部分をカットした構図です。 こうすることで、写真を見たときの印象としては【写真2】のほうが【写真1】よりも明るさや色彩のインパクトが強くなります。



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