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第1回
日帰りで秘湯を贅沢に愉しむ。成田の名泉・大和の湯を訪ねて

東京から車で約2時間。
のどかな田園風景を楽しみながら曲がりくねった道をのんびり進むと見えてくるのが「大和の湯」。
トリップアドバイザーの「2013 日帰り温泉&スパトップ20」を受賞した名湯だ。

2005年にリニューアルオープンした同温泉は、神経痛、関節痛、慢性消化器病、冷え性、疲労回復などに有効で、この地特有の褐色の湯とのこと。
訪れたのは4月上旬。
冬の寒さでこわばった体がほぐれることを期待しつつ車を降りると、むせるような新緑の香りとウグイスたちの輪唱が私を迎えてくれた。深呼吸するだけで体が浄化されていくような新鮮な空気。酸素が濃い。

高級旅館を思わせるような品のある入口を通り、受付を済ませて館内に入ると、ロビーではすでに数名の方が横になって体を休めている。
足元は床暖房が入っていて暖かい。

清潔感あふれる脱衣所は数名の方が静かに着替えていた。幼児がちょこまか走り回っていることもなく、周りを気にせず脱衣できるところが良い。
ちなみに脱衣所にも床暖房が入っているので、靴下を脱いでもヒヤリとしない。

展望浴場「墨染の湯」(※1)への扉をソロリと開けると、湯気の向こうに大きい開放的な窓があり、のどかな印旛沼の田園風景が広がっているのが見える(※2)。
湯は足を浸すと、たちまち足先が見えなくなるほど濃い褐色。
湯温は40~41度。熱くもなくぬるくもなく、じわじわとゆっくり体が温められていくのがわかる。
湯をよく見ると、茶色い何かが浮遊していた。
壁にある注意書きを見ると、それは源泉由来の「湯の華」とのこと。
常に新しい源泉が浴槽を満たしているので、湯はいつも新鮮で衛生的。思わず両手ですくった湯でほほを包む。

体が温まったところで、露天風呂「富士見の湯」(※1)へ。
外につながるドアを開け、石の階段を降りていく。ひんやりとした石の感触がまた心地良い。
雨でも露天風呂が楽しめるように丸いフォルムの木製天井が設けられていて、外には満開の桜とピンク色のもくれんが競うように咲いているのが見える。
湯に体を沈めると、思わず「ふーっ」とため息が出る。
湯温は41.5度前後と少し高めだが、外の空気がまだ冷たいので、ちょうど良い。

湯は褐色だが、吐水口から注がれる湯は黄金色に見える。
手足を伸ばしてゆったりと湯に浸かりながら、再び新緑の香りとウグイスの輪唱を愉しむ。
湯けむりに包まれながら、しっとりと汗をかく。
アトピーに悩む女性が同温泉に毎日通ったところ症状が出なくなったと聞いたが、確かに肌をするりと滑る湯はなめらかで、良質なエキスをたっぷり含んでいるようだ。
右手で左肩に湯をそっとかける。
この湯は、普段がんばっている自分へのごほうびなんだなと、ふと思う。

ほてった体を冷ますために寝いすで休み、また湯に浸かる。
30分ほど繰り返しただろうか。
のぼせないように、一旦風呂を出ることにした。
骨の髄まで温まった感じ。
「あぁ、気持ち良かった」と思わず声が出る。
休憩所で一息ついても、まだ体はポカポカだ。

少し小腹が空いたので、何か食べよう。
せっかくだから、おいしいものが食べたい。
同施設には、淡路島直送の新鮮ネタが自慢の寿司バー「紫苑(しおん)」と、オーナーが選りすぐった国産ワインを多数取り揃えた和風ダイニング「あじ彩」がある。
さて、どちらに行こう。
楽しく迷いながら、エレベーターは2階への扉を開ける。

(※1)男湯・女湯は日替わりです。ちなみに同日の男湯は、大浴場が「枳(からたち)の湯」、露天風呂が「千里の湯」と「天真の湯」でした。
(※2)外から見えないようにフィルムが貼ってあります。

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