ソニー設立の物語を演劇と映像で表現したドイツ発の舞台／上谷忠 ― 趣味

かみやただしのおススメ芝居

第３回
ソニー設立の物語を演劇と映像で表現したドイツ発の舞台

2012.06.19 ［上谷忠］

『Heavenly Bento(ヘヴンリー・ベントー)』は、2004年から2009年の間に、ベルリンやシンガポール、ニューヨークで上演されてきた。日本での公演は今回が初めて。英語での上演となり、日本語の字幕スーパーが付く。この舞台を日本で上演するきっかけとなったのは、主催をしている「Heavenly Bento 日本公演実行委員会」の代表である岡田直子氏が、2009年のニューヨーク公演を見たことに始まる。盛田氏の娘である岡田氏は、まず、日本の企業の創業者のテーマを、ドイツ人が取りあげて演劇にしたという点に驚いたという。

「戦後、井深さんと盛田が再会し、社名を東京通信工業からソニーに変更し、アメリカにラジオを売りに行くというソニー創業の特に“おいしい”ところを舞台にしています。この舞台の監督の奥さまは日本人なのですが、彼女も映像クリエーターとして関わっているので、表現の仕方が日本の感覚とずれすぎていません。話の内容も限りなく忠実です。タイトルからもわかるように、お弁当が取りあげられています。その演出がとても面白く、海外の人からみた日本を改めて感じることも出来ました。」(岡田氏)

岡田氏は、外国人がこのような演劇を作ってくれたことがうれしくもあり、同時に、日本で演劇になってもおかしくないテーマだからこそ、日本で上演しないのを不自然に感じたのだそうだ。

東日本大震災や経済的不況で日本全体が落ち込んでいるいま、「立ち上がれ、何度でも。」というテーマを掲げるこの作品が、多くの人の心に響くのではないかと期待している。