荒野のエッセイスト(映画編)

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第19回
無茶を承知で楽しむ「テルマエ・ロマエ」

ストーリーの柱はいたって明快だ。
古代ローマ帝国のお風呂デザイナー(阿部寛)が、
アイデアに行き詰まると、現代の日本にタイムスリップ。
銭湯や温泉からノウハウを拝借し、
栄光と挫折をくり返す。
当然、登場人物の半分はローマ人。
阿部寛の他、市村正親、北村一輝などの
濃い顔の日本人俳優が演じている。
エキストラは見渡す限り本物の外国人で、
セットも本格的だ。
ローマのシーンでは日本語が使われているが、
話し方がどことなく吹き替えっぽい。
主人公が日本にタイムスリップすると、
彼だけがイタリア語をしゃべる。
この辺のあつかいに上質なセンスが宿っている。
一方、日本サイドは笹野高史を始めとする
いかにもオッサン臭い俳優がわらわらと登場。
ロケ地も伊香保温泉、那須の北温泉、熱川のバナナワニ園と何ともシブい。
古代ローマ帝国の大浴場と日本のひなびた温泉地、
濃い顔と平たい顔……
これらの対比が見るものの脳に
心地よい刺激を与えてくれる。

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