荒野のエッセイスト(映画編)

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第21回
前田敦子とやられ損

2012年4月13日(金)……。
第21回日本映画批評家大賞の授賞式が執り行われた。
この賞の選考委員の一人である僕は、調布市グリーンホールに向かう。
現在のところ選考委員は9名。
大企業に属さずフリーな立場で、映画に関わっている人間ばかり。
良く言えばしがらみの薄い平等な選考ができるが、
悪く言えば個人的な思い入れに左右されやすく、
片寄った結果になるという可能性も否めない。
この日の主の受賞者は
主演男優賞・三浦友和「RAILWAYS~愛を伝えられない大人たちへ~」
主演女優賞・大竹しのぶ「一枚のハガキ」
助演男優賞・片岡愛之助「小川の辺」
助演女優賞・宮本信子「阪急電車」
新人賞 ・前田敦子「もし高校野球のマネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」
新人賞 ・剛力彩芽「カルテット!」
作品賞 ・「大鹿村騒動記」
監督賞 ・成島出「八日目の蝉」
新人監督賞・三宅喜重「阪急電車」
審査員特別演技賞・西田敏行「星守る犬」他
ゴールデングローリー賞・山本陽子、北大路欣也、白山和子、蟹江敬三
ダイヤモンド大賞・浅丘ルリ子
となっている。

個人的には、大半は納得のできるものの、
中には「うーん、それはどうでしょう」と感じてしまうものもある。
ゴールデングロリー賞とダイヤモンド大賞は
日本映画に対する功労賞の色合いが強い。

授賞式での僕の役目は前田敦子と山本陽子に盾を渡すこと。
ただそれだけ……。
実に気楽なものである。
前田敦子に盾を渡す時、
「この前、試写会で「苦役列車」を見たよ。あれもとてもよかった」
とオフマイクで声を掛けた。
もちろんこれは僕の勝手なアドリブで、当日の進行台本にはないコメントだ。
にもかかわらず彼女はパッと顔を輝かせ
「そう言ってもらえると、とても嬉しいです」
と、真剣な表情で答える。
授賞式のダンドリやその後のスピーチの内容のことなどで
頭がいっぱいになっているはずなのに、
この反応は見事と言う他ない。
AKB48卒業を宣言したばかりのあっちゃん。
渡す方にも渡される方にも幸せなタイミングとなった。

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