荒野のエッセイスト(映画編)

バックナンバー

第1回
「SOMEWHERE」と「ブルーバレンタイン」
煙が目にしみる映画

まずは「SOMEWHERE」。
往年の映画ファンにはフランシス・フォード・コッポラの娘として、若い世代には「ロスト・イン・トランスレーション」等のおしゃれでハイセンスな監督として知られるソフィア・コッポラの作品だ。
大人になりきれない売れっ子俳優の父(スティーヴン・ドーフ)と聡明な娘(エル・ファニング)のやるせない、それでいてかけがえのない日々を緻密に描いている。
そして、この父親はどこへ行きつくのか……。
それがタイトルの「SOMEWHERE」と重なるわけだが、エンディングにはブライアン・フェリーのややぶっきらぼうな「煙が目にしみる」が流れてくる。
涙の先は決して絶望だけではない……。
このカヴァー曲はそんな心地よい余韻を与えてくれる。

もう1本は、「ブルーバレンタイン」。これにはまさに愛が終わろうとしている夫婦(ライアン・ゴスリング、ミシェル・ウィリアムズ)が登場する。
小さなすれ違いが作り出す深い溝。カサカサとヒリヒリとどうにもやり切れない愛の風景が容赦なく写し出される。
ほんの一瞬、2人が昔のような愛を取り戻したように見える時があるのだが、その瞬間に流れるのがプラターズの「煙が目にしみる」だ。

僕はアイツらに言ってやるんだ。
この愛は本物さ。だれにも違うとは言わせない。
でも、連中は、言い返す。
愛は盲目だってことが、いつかお前にも分かるさ。
ハートに火がついたら、いつか煙が目にしみる時が来るぜと……。

この息づまる映画の中で唯一、救いのあるシーンなのだが、安心して見てはいられない。
もうピッタリすぎるくらい、ピッタリだね。
演歌の世界より、クールな欧米人の視点がそこにある。

「SOMEWHERE」4月2日(土)、新宿ピカデリー他で公開

選曲のセンスはいいが(あっと驚く「テディ・ベア」のカヴァーも登場!)
全体的にチンタラしていて ☆☆☆

「ブルーバレンタイン」4月下旬、シャンテ・シネ、新宿バルト9他で公開

「スピーシーズ/種の起源」の頃はあどけない子役だったミシェル・ウィリアムズ。
とてつもない女優に成長して ☆☆☆☆

(は1~5、3つが平均)

コメント