荒野のエッセイスト(映画編)

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第34回
日本映画批評家大賞 インサイド・レポート

日本映画批評家大賞
主な受賞者と受賞作品

新人女優賞 武井咲
新人男優賞 青柳翔、チャンミン
助演女優賞 松原智恵子(「トテチータ・チキチータ」)
助演男優賞 大沢たかお(「終の信託」)
主演女優賞 安藤サクラ(「かぞくのくに」)
主演男優賞 松坂桃李(「ツナグ」)
作品賞 「鍵泥棒のメソッド」
監督賞 北野武(「アウトレイジ・ビヨンド」)

ゴールデン・グローリー賞 石濱朗、林与一、夏八木薫、久保明
ダイヤモンド大賞 小林旭

シャングリラ・ホテル東京。
午後5時25分……。
受賞者の皆さんが席に着く時間。
だれよりも早く到着していたのは松原智恵子。
着物姿でただ独り、ピンと背筋を伸ばして座っている。
昭和を代表する銀幕のスターは常に凜々しく美しい。


予定より10分ほど遅れて授与式が始まる。
まずは新人賞の武井咲から。
トロフィーを渡すのは選考委員である僕の役目。
僕は当日のパンフレットに
「どこか落ち着いた昭和の匂いも漂わせている」
と書いたが、至近距離で見る武井咲は
「昭和」と言うより「近未来」。
これまでに見たことのない新種の輝きをたたえている。
古き良き女性のイメージを抱いていたのも
映画の持つマジックによるものだったのだろう。
囲み取材では、カメラマンから
「トロフィーを持った写真を」
という声が掛かり、舞台裏では
トロフィーを探して関係者があたふた
というシーンもあった。

最も印象的だったのはダイヤモンド大賞の小林旭。
受賞スピーチでは
「これがどういう賞なのか全く分からないけど、
貰えるものは貰っておきます」
と、大物ならではの見事なボケをかまし、さらに
「もっと立派な賞をいただけるように精進します」
と締めくくった。
暗に、これは大した賞じゃない、と言っているのと同じ。
我々選考委員も関係者も思わず苦笑い。
小林旭でなければ言えない大胆なせりふだ。
我々ももっと立派な賞にすべく精進します。

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