荒野のエッセイスト(映画編)

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第35回
エルヴィスの流れる日本映画 「フィギュアなあなた」と「共喰い」

これはまさにオタクの夢……。
美少女の等身大フィギュアが動きだし、
孤独な男と心を通わす。
体も通わす。
「フィギュアなあなた」はR18+の作品で、
フィギュアに扮(ふん)した佐々木心音は
もう脱ぎっぱなし!
無理に服を着る必要もないわけだ。
人形だから。
この映画に何度もくり返し流れてくるのが
エルヴィス・プレスリーの最大のヒット曲として知られる
「ラブ・ミー・テンダー」
1956年に発売され、全米No1に輝いた曲。
この映画では日本語の歌詞が付いているが、
これが何ともぎこちなく、居心地が悪い。
単に訳詩がヘタッピーなのか
逆にそれがねらいなのかが分からない。

田中慎弥が芥川賞を受賞した原作を
「ユリイカ」の青山真治監督が映画化したのが
「共喰い」
キャッチコピーは
「母さん、なんで僕を生んだのですか?
あの男の血をひく僕を――。」
こちらはR15+。
セックスの時に女を殴る父。
その血を引いていると感じつつ、
幼なじみの彼女と性交を続ける
17才の少年の物語。

破滅的な……
それでいて静けさに満ちたエンディングに
アコースティック・ギターの音色が響く。
曲は「サレンダー」。
1962年のエルヴィスの全米No.1ヒットソング。
こちらは映像と音楽がしっくりと一つに溶け合い、
選曲のセンスが光る。

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