荒野のエッセイスト(音楽編)

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第14回
GS天国

さて、GSのコンピレーション・アルバムは色々と出揃っているが、
僕のおすすめは「GS天国」。
ジャケットには(右上から時計回りで)バニーズ、シャープ・ホークス、
ザ・フィンガーズ、ザ・ビーバーズ、4・9・1とマニアックなところが並んでいるが、
中身はキッチリと有名どころを押さえている。
①の「ブルー」、②の「亜麻色」、④の「首飾り」、
⑥の「君だけに」、⑧の「エメラルド」
も聞くことができる。
こうしてみると、GSの時代のヒロインは、青いお城に住んでいて、
亜麻色(ブラウン)の髪に緑の瞳……って、もう完全に外国人ですね。
まだ外国が遥か彼方で、紅毛碧眼に憧れを抱いていた時代。
夢とおとぎ話がごっちゃになって現実味に乏しい。
これらのヒット曲はすべて1967~69年の間に集中している。
ブームが一過性に終わり、四畳半フォークに取って代わられるのは
自然の成り行きだった。
今聞き直すと、どれも内容が幼稚で、サウンドもスカスカだが、
どの曲にもえも言われぬ味(甘さとほろ苦さ)が染み込んでいる。
「女々しい雄叫び!」ともいうべきその勘違いっぷりも愛しい。
時にアダ花はバラより美しい。
あの時代ならではの生命が宿っている。
たとえ一人で部屋に閉じこもっていても、心はいつも外に向いていた。

①あなたが僕を待っている
暗くて淋しいブルー・ブルー・ブルー・シャトウ
②乙女は羽根のように丘をくだる
彼のもとへ
④愛のしるし 花の首飾り
私の首にかけておくれよ
⑥君の君のあたたかハートに
タッチしたい
⑧会いたい 君に会いたい

だれかに会いたい。触れ合いたい。
ま、できることならそれ以上のこともしてみたい。
あのころの若者は皆そう思っていた。
そこには健全な生き物の姿がある。
今の日本に必要な物は、生身の人間の愛に飢え、愛を求めるGSの魂なのかもしれない。
動物に生まれたんだから、植物みたいに生きちゃ、ダメですってば!

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