荒野のエッセイスト(音楽編)

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第18回
由紀さおり&ピンク・マルティーニ 1969

由紀さおり&ピンク・マルティーニ 1969

ブルー・ライト・ヨコハマ
さらば夏の日
パフ
いいじゃないの幸せならば
夕月
夜明けのスキャット
わすれたいのに
など、12曲を収録。
キャッチ・コピーは
国境を越え、
時代を越えて、
奇跡のコラボレーション・アルバムの誕生

発行:EMIミュージック・ジャパン
定価 ¥3,000(本体¥2,857)

ご存知の人も多いと思うが、
由紀さおりのCDが大変なことになっている。
全米の人気オーケストラ、ピンク・マルティーニと組んだアルバムが
世界のチャートに躍り出た。
1969年にヒットした曲、ヒットしなかった曲が12曲。
11曲が日本語で歌われているが、邦楽8曲と洋楽が4曲。
日本語の「パフ」と「マシュ・ケ・ナダ」は初めて聞いた。

1曲目は「ブルー・ライト・ヨコハマ」。
てっきりジャズっぽいアレンジが加えられているのかと思ったが、
全体のサウンドはまさにおしゃれな歌謡曲。
ピンク・マルティーニは、古いポピュラーなら何でもござれの
12人編成のオーケストラ。
そのメンバーが和製ポップスの匂いをこれでもかと振りまき
「俺たちはこんなサウンドも作れるんだぜェ」
と楽しんで遊んでいるようなムードがありあり。
一流の連中がキチンと遊ぶと、まず間違いなくそれなりのものが生まれる。

5曲目は「いいじゃないの幸せならば」
流行ったなァ、このフレーズ。
当時、最前線の盛り場で、
ホステスに飲み過ぎを諭しても
歌が下手だとなじっても、返ってくる答えは
「いいじゃないの、幸せならば」。
1969年は僕が20歳になった年。
多感だったあのころ。
甘ずっぱい青春時代にワープする。

そして、いよいよ7曲目に「夜明けのスキャット」。
あのイントロ、あのメロディー、あの歌声……。
若き僕は当時、
「サウンド・オブ・サイレンス」のパクリじゃないか!
と憤ったものだが、
今聞くと、いいなァ、いいなァ、すごくいい……。

たいしてドラマティックな人生ではなかったけど、
恋もしたし、オイタもしたし、それなりに辛酸もなめた。
過ぎ去った日々が目の前に迫ってくる。

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