荒野のエッセイスト(音楽編)

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第23回
エルヴィス・プレスリー アルバム随想

湯川れい子さんが今年の2月に発表した
「エルヴィス・プレスリー アルバム随想」
をツラツラと読む。
キャッチコピーは
「究極のエルヴィス・プレスリー聴き方ガイド!」
であるが、決して専門書ではない。
古くからのエルヴィス・ファンがつづったキュートなエッセイ。
読んでいるうちにホンワカした気持ちになる。
時には少女のような、時には母親のような
激しくおだやかな愛が伝わってくる。
本を読み出してすぐに
僕の長年のわだかまりをスラッと氷解させてくれるような文章に出会った!
湯川さんはエルヴィスのデビューの頃には、
オリジナルの曲が少なかったことをサラリと提示した後、
こう結んでいる。

「逆に、オリジナル曲があったとしたら、かえってエルヴィスの独自性は解りにくかったかも知れず、エルヴィスが単にチマタの一青年であり、吊しの服を着るように、そのへんにころがっていた曲を取り上げて歌ったからこそ、あの独特のスタイルが目立って、ロックンロールの誕生を、明確なスタイルとして形成することが出来たのです」

異議なーし!
そういうことなんですよねえ。
いわばエルヴィスは
近所の肉屋と行きつけの八百屋で仕入れた野菜で、
とびっきりの料理を作った料理人。
どんな材料だって、この人の腕に掛かりゃあ、もう……
ということなんですよ。
エルヴィスとビートルズ……
どちらが優れているかは分からないが、
オリジナルうんぬんで評価するのは止めた方がいい……。


湯川れい子著
「エルヴィス・プレスリー アルバム随想」
(発行所(株)アニカ)
¥2,000+税、
ちょっと高いけどオススメです。

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