荒野のエッセイスト(音楽編)

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第7回
チェンマイで流れた音楽

アジア旅行での楽しみの一つは
何と言ってもナイト・バザール。
チェンマイのそれはとても巨大で、
衣服、小物、民芸品などがあふれ、
食堂、マッサージルームなどが軒を並べている。
中央の広場では、ひときわ華やかな一団が
小さなチラシを配っている。
よく見るとタイ名物のオカマ軍団で、
かなりの美形も揃っている。
その美しさにしばし見とれ、その中の一人に
一緒に写真を撮っていいかと尋ねると、
キュートな作り笑顔を浮かべて、「イエス」と答える。
撮影後、「コップンカ(ありがとう)」と言うと、
「コップンカ」と答える。
こだまでしょうか。いえ、オカマです。

チップなどは一切要求しない。
チェンマイのオカマは質がいい!
チラシには午後9時半から無料でショーをやる
とうたっている。
時計を見ると午後9時10分。
手短にショッピングを切り上げ、会場に向かう。
そこは屋根のないショーパブのようなムード。
入場料もなく、何かを注文しろ
という気配も全くない。
明らかに只見も出来そうだが、
ソフトドリンク(90バーツ=270円)をオーダーする。
かぶりつきの席はすでに満席だったので
後方のカウンターに座る。
爆音のような激しい音楽が6月の生暖かい空気をつんざく。
ベースの利いた今どきのサウンド。
ショーの内容は世界共通で、様々なヒット曲に合わせ、
オカマが口パクをしながら、ひたすらに踊るというもの。
スタイリスティックスの「愛がすべて(CAN'T GIVE YOU ANYTHING BUT LOVE)」
が流れ、スレンダーな美女(オカマだけど)が登場。
僕は思わず、コーラのボトルを握りしめたまま
ステージのそばに近づき、その踊りを見つめる。
太めのオカマがわざわざイスを持ってきてくれて、
「ここに座りなさい」とほほえむ(ちょっと不気味)。
ダイアナ・ロスとライネル・リッチーの
「エンドレス・ラブ」が流れると
顔の右側を女性、左側を男性にメイクしたオカマが登場、
ステージ上のカーテンをたくみに利用し、
男と女を演じ分ける。
お前は「金色夜叉」の波多野栄一かっ!
(わかりにくかったら無視して下さい)。

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