荒野のエッセイスト(音楽編)

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第28回
木彫りの人形が甦る カウ・ライジャ

ハンク・ウィリアムスが大好きだった。

C&W(カントリー・アンド・ウエスタン)界の大御所で、
日本では「ジャンバラヤ」「偽りの心」
「ヘイ・グッド・ルッキン」などが知られている。
僕が小学生の頃、小坂一也のヴォーカルで
「カウ・ライジャ」(「カウラジア」と表記されることも多い)を聞き、
その甘くもの悲しい旋律に興味をそそられ、
そこからオリジナルを歌うハンク・ウィリアムスにたどり着き、
鼻にかかった独特の高音のとりこになった。

「カウ・ライジャ」は木彫りのインディアン人形。
向かいのアンティーク・ショップで働くインディアンの娘に恋をするが、
キスをするどころか口をきくこともできない
(何たって木彫りの人形だからね)
というプラトニック・ラブの権化のような内容です。
この曲はマイナーで始まり、サビでメジャーに転調するという
C&Wしてはめずらしい構成になっている。
ハンクの土臭い低音とツンとくるファルセットが心に響く。
すっとんきょう一歩手前の心地良さ。

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