コミュニケーション達人への道

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第70回
叱るということ

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育成や子育て、教育全般において「褒めて伸ばす」事がデファクト・スタンダードになった現在、叱ることは年々難しくなっています。
しかし、指導や教育を行う上で「叱る」ことを避けて通ることは出来ません。

その人の成長や学びに必要なら叱りましょう。
けれど説明によって理解が得られるのであれば、なるべく叱らずにそうしましょう。
なにがなんでも叱る必要は全くありません。

以前は厳しく叱り続け、精神的に限界まで追い込み、その限界を伸ばすスパルタ教育のようなスタイルが容認され支持されていました。
特にスポーツの世界ではスパルタ教育がスタンダードであるところもまだまだ多く見受けられます。

しかしながら私は、様々な教育指導法やコミュニケーション手段がある中、何かを教えたり、指導したりする際に、たやすく叱る手法を入れるのは危険であると考えています。
特に、叱る人と叱られる人が受けてきた教育や育った家庭環境によってコミュニケーション手段や表現に大きな隔たりやある場合、叱りを使う指導は慎重に行う必要があります。
スパルタ教育に一定の経験や理解がある昭和を知る年代と、褒めて伸ばす、個性尊重の平成世代では「叱る」行為に対する耐性や認識はかなり違います。

何がなんでも叱らず、まず理解を得る為の説明や説得で相手とのコミュニケーションを行いましょう。
それでも叱らなくてはならない場合は、相当な事態に直面した状況でしょうし、相手への愛情や想いが強い場合、冷静になれないのが人間です。
感情的に叱ってしまった場合は、叱った相手へのフォロー・コミュニケーションで感情的なしこりを残さないようにしてください。

相手との関係性や、タイプ、状況に応じて細やかに変える必要があるコミュニケーションが「叱り」なのです。だから上手に叱る方法は「これだ」と言う基本形がありません。
なので、叱られた人は大なり小なり傷付き、叱った人に対しての感情的な遺恨が生じる可能性が否めません。故に、叱った後のフォロー・コミュニケーションを必ず行い、相手へ自分が伝えたかった真意が伝わっているか、愛情や思いを理解しているかを確認し、伝わっていない場合は、叱る事を繰り返さずに相手の納得を得るまで冷静に話をしましょう。

フォロー・コミュニケーションは、叱った直後ではなく、少し時間をおいて行うのが理想です。
叱られた方も感情的になっている状態では、文字通り聞く耳を持てません。
数時間の間を置き、場合によっては次の日に行ってもいいでしょう。
ただ、忘れてしまわない様にしてください。

かのパナソニック(旧松下電器)創業者の松下幸之助は人心掌握に長けている人物で有名ですが、激昂するような激しい叱り方をよくしたことでも有名です。
けれど、部下を叱った後にわざわざその人の家にまで自ら電話をし、奥さんへ「きつく叱ってしまったので自殺してしまわないかと心配で」と直接フォローを行ったそうです。
厳しく叱るだけでなく、この様な心配りに部下の社員は心を掴まれるという逸話があります。
現代では、電話ではなくメールやSNSなどの便利なコミュニケーションツールがありますので、これらを上手に活用する事も大切です。

フォローでは、叱った方が
「さっきは感情的になって申し訳なかった。」
と感情的になったことについて謝罪してから、話し始めると相手も心を開く姿勢になりやすいでしょう。
繰り返しになりますが間違っても再度叱る行為を重ねないようにしてください。

叱ることは愛情の表れですが、その愛情を相手が感じていなければ、叱る行為はお互いに不愉快になるだけの悲しいコミュニケーションになってしまいます。
しっかりとフォローをしてください。



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