コミュニケーション達人への道

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第12回
「叱り」のコミュニケーション ~叱る勇気と叱られる覚悟~

【叱る】

1>目的を自分で確認した上で叱る

大きな感情を伴うコミュニケーションは、なぜそれが必要なのか、目的は何かを自分自身確認した上で発信するくせをつけましょう。さもないと自分の感情や気分に左右された発信になってしまいます。
「叱る」最大の目的は相手の成長です。
話せばわかる事、説明すれば解ることは叱る必要はありません。相手の成長を考えた時に、早急かつ深刻に改善すべき事態が生じたら、どうすべきか、どうしたらいいのか等具体的な解決策や改善提案を入れた相手の成長の方向と着地点を確認した上で叱りましょう。

2>叱るのは初回でなく、2度目以降

そもそもそのミスや失敗、失態が生じる前に適切な教育や指導を受けていたかどうか。ここはとても重要なポイントです。叱る対象となる人に対して、自分がそれを教えていなかったとしたら、一度は説明する、これは大人としての責任です。
「当たり前」「当然」「常識」「普通」
これらの言葉はあくまでも「自分」が基準です。他の人にとっては「当たり前」「当然」「常識」「普通」な事はないという視点で人と対応することが大切です。
だから一度教えた事、伝えた事が守られなかった場合にのみ叱る様にしましょう。

3>「叱りのツボ」を事前に伝えておく

私が新人の時代は、やたら不機嫌でイライラした上司が多くいました。「今日はご機嫌がいい」とか「ご機嫌が悪い」等これらの上司の顔色を毎日伺う日々は文字通りストレスであったことを思い出します。これは恐怖政治と同じで、常にびくびくさせては相手の自立や成長の妨げになります。ミスが隠ぺいされがちな組織は、かなりの確率でこの様な恐怖がはびこっています。「怖いから隠す」結果は、ご存じの通り、それが露呈した時に壊滅的な打撃を与えますので自分の会社や組織、家庭に恐怖がはびこっていないかチェックしてみて下さい。しかし、甘くゆるい、優しすぎる対応も相手の成長を阻む原因です。そこで提案がこの「叱りのツボ」を事前に伝えるという事です。
私の場合「1度目は説明する。2度目は指導する。3度目は叱るよ。」と事あるごとに部下全員に伝えていました。すると2度目で自発的に改善や注意をしながら行動するようになった為叱る回数が減りました。ただし、叱る時は思いっきり叱った為、これを見たり経験した部下は「あんな目に会いたくない」とある種の恐怖を感じたと思います(笑)。
その他、約束を守らない、挨拶をしないこと等も叱るという「叱るツボ」の宣言をよくしました。
「叱りのツボ」を事前に伝えておくと、叱られる方も「約束を守らなかったからですね。」等と自分が叱りのツボを押したことが解るので、納得して叱られるという効果があります。

4>フォローは当日

パナソニックの創業者で、「経営の神様」と言われた松下幸之助が人心掌握に長けていたのは、何よりこのフォローが素早くしっかりできていたからではないかと思います。
松下幸之助はとても感情的に叱ることで有名でした。けれど多くの社員は「創始者(松下幸之助)に叱られた」ことを自慢していたそうです。当時の松下電器では創始者(松下幸之助)に叱られて一人前という雰囲気だったと、当時を知る方に教えていただきました。
そして松下幸之助は叱りっぱなしにはしなかったという点でも有名だったそうです。
一度激しく叱った部下の家に、その当日「今日、ご主人を厳しく叱ったのでもしかすると夜自殺してしまうかもしれない。心配なので様子を見ててほしい」と奥様宛に電話をかけてきたそうです。当時すでに“経営の神様“になっていたにも関わらずこのようなきめ細かいフォローがあったからこそ多くの人が心酔したのだと感じるエピソードです。
叱っていくうちに、どうしても感情的になります。それを押えようとすると逆に想いが伝わらず、冷たい指導になってしまう場合があります。感情を伝える事はとても大切ですが、それが怒りに近づいてしまった場合、この様なフォローを当日しっかりしましょう。
メールや声掛けでもフォローの気持ちが伝えることが大切です。

次回も引き続きこのテーマで。

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