江戸の名残を歩く

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第38回
寅さんゆかりの下谷を訪ねる

3回にわたって下谷地域を歩いてきましたが、昭和22年(1947)に浅草区と下谷区が合併して台東区が誕生した時、下谷の名前は区の名前からは消えました。しかし、町名としては残っています。今回は台東区下谷に残る江戸の面影を訪ねます。

下谷は1丁目から3丁目までありますが、1丁目に「恐れ入谷の鬼子母神」のフレーズで知られる日蓮宗の真源寺があります。入谷鬼子母神です。東京メトロ日比谷線入谷駅のすぐ近くにあります。

鬼子母神門前
本堂

真源寺は万治2年(1659)に創建された寺院ですが、江戸っ子にとっては鬼子母神が祀られている寺院として知られていました。鬼子母神は安産・育児の祈願を叶える神様ですから、特に母親たちからの信仰があつかった神様です。
また、池袋駅近くの雑司が谷の鬼子母神、千葉県にある中山法華経寺の鬼子母神と並ぶ江戸三大鬼子母神の1つでもありました。

入谷鬼子母神と言うと、現在では毎年7月にその門前で開催される朝顔市で取り上げられるのが定番になっています。

入谷朝顔発祥の碑

JR山手線御徒町駅界隈もかつては下谷区に属しましたが、江戸の頃は御家人の組屋敷が集中する地域でした。彼ら御家人は内職として朝顔を栽培しましたが、江戸時代が終って武士が消えてしまうと、今度は入谷に住む植木屋が朝顔を栽培するようになります。大正に入ると、入谷の植木屋は朝顔の栽培を止めてしまいます。しかし、昭和23年(1948)に入谷で朝顔市がはじまり、ここに江戸以来の歴史が復活します。
今では朝顔市は東京の初夏を告げる風物詩となり、その期間は物凄い人出となります。境内には下谷七福神の一つである福禄寿も祀られています。

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