人はなぜ『道』を探すのか?庭道への道

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第15回
「職人魂」と「禅」そして「スティーブ・ジョブズ氏」

平等院鳳凰堂 浄土式庭園

さぁさぁ、少しずつ気温が上昇してきよったね。暑さも増してきておるがね。先月5月はとても気持ちの良い気候じゃった。金環日食もあり、関東でもよく見えたね。 今年5月5日は立夏(りっか)、それから小満へと季節は流れ「芒種」(ぼうしゅ)と移り行き、6月21日はもう「夏至」(げし)。そうです、晩春から初夏に入ってきよるんよ。ドンドンドンドン真夏へと近づいとる。

この6月6日の芒種から夏至までに、関東あたりでは、ネムノキ、ナツツバキ、クチナシ、アジサイなどが開花し、田んぼや小川では蛍が現れ始め、梅の実が黄ばみ始める。

4月都内 「紅梅」

夏至のころは、昼間の時間が一年で最も長い時期。陽気が良く、農家では田植えが大繁忙となります。開花する花は、ザクロ、ムクゲ、ハギなどです。夏至が過ぎれば、7月7日に「小暑」(しょうしょ)となり、梅雨が明け、本格的な暑さが始まり、夏本番となるがね。この日から夏らしい暑い日が続くがよ。
このころから、暑中見舞いが出されるようになる。城下町のお堀などではハスの花が咲き始め、また集中豪雨も多く発生する。

「小暑」の時期は、キョウチクトウ、エンジュ、アメリカデイゴ、フヨウが開花し、僕ら職人にとっては、とっても厳しく辛い時期に突入するんよ。
「暑か~、暑か~、暑か~」などと思っとると、本当に苦しく嫌になってくる。だからここからは、僕ら職人の夏を生きぬくための知恵と技の見せどころでもあるがね。

庭では、草がドンドンドンドン次から次へと生えてくる。抜いても抜いてもまた生えてくる。散った花樹はすぐに手入れを行い、来年またステキな花を咲かせてくれるように整えてあげる。常緑樹類には剪定(せんてい)を行い、水分が足りなさそうな植木には水をかけてあげ、害虫が発生すれば駆除を行う。僕ら植木職人は、夏場は特に猫の手も借りたいほどバタバタバタバタしおるんよ。

台風や雨、湿気に耐え忍びながら、ただ黙々と植木の管理を進めてゆく。技には「腕」も必要なんだけど、この厳しさ、辛さを心で乗り越えてゆく「精神力」が大事。こんなとき気を抜けば、ケガをしたり体調を崩したりすることにもなる。だから決して油断はできんとよ。

皆さんもそうだよね!
僕らは常に「生と死」の境目に突っ立って生きているようなモノだよね。人間は、もろくて壊れやすい生き物なのだ。
その昔、ほんの四、五十年ほど前まで、日本人の多くは生きるための技と知恵を持ち、正に「職人魂」で日々油断できない生活をおくっていた。暦や空とにらめっこしながら、天を敬い、天に祈り、豊作に感動し、水は井戸からくみ上げ、穀物は瓶で保管し、大事に大事に使っていたあの時代を、今皆さんはどう考え、どう思うとるでしょうか?

「職人魂」とは「日本人の心」。今も昔も何ら変わっとらん!
「強い心」だとか「弱い心」だとかそんなことではなく、その人の心の持ち方だと思う。人に迷惑をかけず、目の前のことを「遮二無二」やればいい。生活できなくなることを恐れたり、心配したりせんでよかがよ。
「己魂(みたま)」を順序よく整理すればよか。

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