お取り寄せからみたニッポン

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第1回
青森の津軽塗から生まれた「津軽うるおい漆」

漆器の魅力は日本の技術力の結集

唇に触れる感触の柔らかさで、漆器に勝る器はない。とくに滑らかな曲線を描く漆器の椀のフチは、母の指のような暖かさと丸みで唇に優しく、和食の繊細な味わいをさらに豊かにしてくれる。硬質なガラス器や、鋭利な金属器では、到底かなわない“口あたり”だろう。

海外では漆器をjapanと呼ぶ。とはいえこれまで漆は中国伝来技術のひとつと考えられてきた。それが、中国の漆器が発掘された遺跡よりさらに古い、日本の縄文時代の遺跡から漆器が発見された。漆木のDNA分析で、日本のウルシの木は日本固有種であることも確認され、日本古来の伝統工芸品の中でも、漆器は日本生粋なのではないかという説が浮上して、ロマンをかきたてられる。

そうした一方で、ほかの伝統工芸品同様、数々の問題も抱えている。2011年1月開催の「漆サミット2011」の副題が―危機に直面している国産漆―だったように、職人の高齢化や後継者問題、優良なウルシ原木の減少や、加工所の運営難など、解決しなければならない課題は多い。素地をプラスチックにしたり、海外の廉価品が輸入されたりもしているが、本物の漆器は漆の樹液を木地(木の素地)に塗って仕上げる天然樹脂塗装の器で、工程は多岐に渡り、大変な手間と繊細な品質管理と高い技術が必要だ。日本原産の良質な素材に、信頼しあう職人の力が結集され、それが、軽くてあたりが柔らかいのに堅牢な理想の器となる。蒔絵や螺鈿といった華麗な装飾を施したものから、ただシンプルな朱塗りまで、独特なモノの美を漂わす。

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