お取り寄せからみたニッポン

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第2回
秋田独自の金属工芸品・杢目銅

現代に蘇った美しい金属工芸技術

この技法が再び復活したのは、明治時代。1894年生まれの鍛金家・進藤玉明が10年かけて伝統技術を復活、独自の工夫を加えて、花器・香炉といった工芸品を作り上げた。融点が異なる金属を溶かして混ぜあわせるのではなく、それぞれの色や質を残したまま重ねて接合するのはたいへん難しい。剥離させないだけでなく、美しい文様に仕立てるにいたっては、知識と経験、そして職人の努力や情熱がなくてはできないことだ。現在は、2006年に「現代の名工」に選ばれた千貝弘氏など数名によって技術が継承され、新たな工芸品やアクセリーが作られている。県内の貴金属店や工芸品を扱う店で購入することができるが、基本的にすべてが一点ものだから品数が多いわけではない。同じものがない、一種類より丈夫、といった特徴から、オーダーメイドの結婚指輪としても、人気が高い。入手したい場合は、そうした店舗でオーダーするという方法もある。

おもしろいことに杢目銅は、海外でも認知度が高く、フランク・ソーヴィル氏、ジェームス・ビニオン氏など数人の海外作家がこの技法で作品を作っている。「Mokume Gane」「Mokumegane」といった単語で検索すると、この技法を紹介した海外のサイトがいくつもヒットするし、英語版のウィキペディアには「Mokume-gane」(※)という項目が設けられている。日本語のウィキペディアには、まだ「杢目銅」や「木目金」といったページはない。しかし、この技法の魅力は、確実に若い人たちにも伝わっている。千貝弘氏に師事した秋田県大仙市の金工作家の坂本喜子氏のアクセサリーが、日本全国のロングライフな工芸品を集めた展覧会 nippon vision 4「access new jewellery accessories」で展示されているなど、次の世代が作り出していく美しい製品が、楽しみだ。

(※)http://en.wikipedia.org/wiki/Mokume-gane

●秋田県 美の国あきたネット
お宝発見ハンドブック~工芸技術編~
http://www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1224635588330/index.html


千貝工芸

●“杢目銅技法の表現に新境地を切り開いた”とされる
現代の名工・千貝弘氏のホームページ
http://ha4.seikyou.ne.jp/home/chigai/index.html


杢目金屋

●木目金の結婚指輪のオーダーメイド専門店
http://www.mokumeganeya.com/

●nippon vision 4「access new jewellery accessories」
D&DEPARTMENTのナガオカケンメイによる
「47都道府県の伝統工芸はアクセサリー作家と出会ってどうなっているか?」という展覧会
http://www.d-department.com/jp/project/nippon-vision/exhibition/04/index.html

●日本銅センター PR広報誌 第170号(平成22年9月15日発行)
「杢目銅」/正阿弥伝兵衛の世界
http://www.jcda.or.jp/center/shuppan/dou170/d170_03.pdf

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