お取り寄せからみたニッポン

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第3回
岩手県・デザインと効能で見直される南部鉄器

見直される特徴と新たなモダンデザイン

南部鉄器が再び注目されるようになった理由はいくつかある。

まず注目されたのが鉄器の効能だ。鉄は熱効率が良く、蓄熱効果も高い。厚手の鉄鍋はとろ火調理もでき、材料の旨味を引き出す。また、煮物などを鉄器で調理すると、身体に吸収されやすいニ価鉄を多く含むため、日常的に使うことで鉄欠乏性貧血の予防に、料理から鉄分補給することも可能だという。

さらに、伝統的な和物への愛着があげられる。古道具屋の店頭などにあると目を引く、コロンとした独特の形状。レトロな和物の復権で、そうしたデザインに愛着や郷愁を覚える人も多く、伝統的なデザインの南部鉄瓶が、見直されてきた。

また、モダンなデザインの製品が作られていることも大きい。

日本の代表的なプロダクトデザイナーである柳宗理も、やわらかな曲線と、機能的なデザインで、和洋どちらの料理にも使える「TEKKI」シリーズといった南部鉄器シリーズをデザインしている。


また、ウレタン塗装やシリコン塗装で鮮やかなカラー仕上げを施し、黒一色だった南部鉄器のイメージを払拭した岩鋳(IWACHU)の、南部鉄器のティーポット「曳舟」がニューヨークのMoMA(近代美術館)のカフェで、使われるなど、斬新なデザインの製品の開発も進んでいる。

最近では、これまでの伝統的なスタイルの印象を残しながら、蓋のツマミが熱くならないよう「木の摘み」にしたり、IH調理器に対応して底面を平らにしたり、持ち手の鉉(つる)を、ポットへの注水や水道から注ぐ時のバランスや使い勝手を考慮して独特な形状にするといった工夫を加えた、「ユニバーサルデザインシリーズ(※)」の南部鉄器も作られている。

南部鉄器は、炭火で焼成することで、酸化皮膜ができるため錆びに強い。手入れや扱いをきちんとすれば、何代でも使い続けられるものだ。 デザインが多様化することで、使いやすさも高まっている。金属ながら、人と長い歴史を共有してきたシンプルで堅牢な鉄の道具は、使い捨てない価値観に戻りつつある今の日本の暮らしに、とても良く似合っているように思う。

●東北の伝統工芸品 岩手県・南部鉄器
http://www.tohoku.meti.go.jp/s_cyusyo/densan-ver3/html/item/iwate_01.htm

●南部鉄器協同組合
http://www.ginga.or.jp/~nanbu/

●水沢鋳物工業協同組合
http://www.ginga.or.jp/~imono/

●南部鉄瓶・南部鉄器専門販売サイト「鉄蔵.com」
http://www.tetsuzou.com/
(※)「ユニバーサルデザインシリーズ」の南部鉄器
http://www.tetsuzou.com/universaldesign.php

●まがりや.net IWACHU
http://www.magariya.net/makers/nanbutekki/iwachu.php

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