お取り寄せからみたニッポン

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第5回
宮城県・異なる個性でコレクションされるこけし

第三次こけしブームでいままた注目

東北地方どこも、たいていの観光地で目にするのが、土産物のこけし。ここ数年、その素朴な風情が見直され、写真集が出版されたり、マトリョーシカのような創作こけしが販売されるなど、密かな“第三次こけしブーム”がきているといわれている。
そもそもこけしは、丸い頭部と棒状の胴体に模様が描かれたシンプルな木の人形で、江戸時代末期から、温泉場の土産物として売られてきたもの。湯治場で、木地師が疱瘡(天然痘)から子を守る赤い染料を使って、玩具を作ったのが始まりといわれ、湯治客は、心身の回復と子の成長、そして五穀豊穣を祈る縁起物として土産に買って帰ったそうだ。

そうした温泉のある土地ごとに、異なる系統のこけしが発達してきた。現在、伝統こけしは、著名な系統が10あるというが、そのうちの半分の系統が宮城県に集まっている。
それが、「鳴子」「遠刈田」「弥治郎」「作並」の4つの本流と「肘折」のこけし。そのほか、福島の「土湯」系、岩手の「南部」系、秋田の「木地山」系、青森の「津軽」系、山形の「蔵王高湯」系だ。これに、作並から山形系を独立させ、11系統あるという分類もある。

鳴子は、こけし作りを行う工人の数が最も多い。温泉街には「こけし通り」があり、「日本こけし館」「岩下こけし資料館」などもある。鳴子こけしの特徴は、首を回すとキュキュと音がすること。胴の中央が少し細くなった安定感もあり、いかにもこけしといった印象だ。
鳴子に次いで盛んなのは、花びらのような赤い放射状の模様と額からびんにかけて八の字に赤い飾りが描かれる遠刈田系。歴史的にも鳴子より古くから作られていたそうで、頭部が大きく胴が細いバランスは、子どもが握りやすいように作られた原型に近いものなのかもしれない。
遠刈田こけしから分化したといわれる弥治郎こけしは、頭部にロクロによる二重、三重の輪が描かれ、胴体にくびれがあるのが特徴。手作りだったこけし作りにロクロが導入され、木地作りだけでなく模様にも応用されてデザインが進化したのだろう。
作並こけしは作並温泉ではじまり、山形、仙台の都市部で作られるようになったもの。台座がついて安定感があるもの、棒状の胴に小さい頭など、素朴な味わいの中に工夫や洗練された技が見られる。
山形県の肘折温泉で発達した肘折こけしは、肘折温泉から仙台に移住して継承された独特なもので、一番の特徴は顔だちだ。大胆な筆で、強い印象を与える目や表情を描き、強烈な存在感を感じさせるこけしとなっている。

1959年からは宮城県白石市で「全国こけしコンクール」なども開催されるようになり、伝統工芸品として愛玩されている。大正時代には、新しい玩具におされて、一時期廃れそうになったそうだが、各地でさまざまな系統があったことなども幸いして、大人が鑑賞物としてコレクションするようになり、第一次ブームがあったそうだ。戦後、もう一度盛り上がり、そして最近の第三次ブームで、若いクリエーターが絵付けしたり、和物好きの女子がコレクションしたり、古物がオークションで取引されているという。

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