お取り寄せからみたニッポン

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第16回
滋賀県・お米から作られる和ろうそく

日本人の主食の副産物から生まれた新しい炎

大與の「お米のろうそく」の原料は、米の糠(ぬか)だ。
日本人の主食である米を精白する際、破棄される糠も、近年、さまざまなものに加工されている。油分が多いことから、昔から、米ぬか油などに使われたり、床や柱を磨くのに使ったりもしていた。なるほど、ワックスに近い使い方でもある。
この糠に含まれるろう100%で作られたのが「お米のろうそく」なのだ。面白い材料に着目したなぁと関心したが、実は滋賀県は、かつて京阪神に米を供給していた農業県でもあったそうで、2008年のデータでは、総収穫量176000トン。人口10万あたりの収穫量では、米どころの東北勢が上位を占めるなか、堂々の全国14位。滋賀県は琵琶湖があるため、標高が低いように感じるが、実は比較的標高が高く、冬期は寒冷で降雨量が多いため、米作りに適した環境なのだという。「近江米」の産地だけに、廃棄される米糠の産業利用もさまざまに研究されているのだろう。

製品の概要には「蝋の垂れや油煙がほとんど出ず、安心してお使いいただけます。純植物性の蝋ですので、環境にも人にもやさしい和ろうそくです。」とある。油煙がほとんどでない、というのは大與のホームページにも解説されていて、油煙の量は、炎の大きさ、つまり芯の大きさに比例するのだという。芯が細いと煙は少なくなるが、ろうを吸う量が少なくなり、溶けたろうが垂れてしまう。和ろうそくは、パラフィンなどの西洋ろうそくに比べ流動性が低いため、ろうを吸い上げる力が弱いと消えてしまう。和ろうそくの芯が太くしっかりしているのは、芯とろうのバランスを考慮して、最適な炎を灯す工夫。そんな燃焼バランスをつきつめて作られてきたのが、和ろうそくなのだ。伝統的ノウハウを生かし、新たに生まれたお米のろうそくは、約8㎝の長さで約40分も燃え続ける。

大與の製品には、仏事に使われる朱(赤)、金、銀、白以外の、斬新なカラーの和ろうそくも販売されている。
黒いろうそく「朔」は、闇の中で炎だけが浮かび上がるようなイメージがコンセプト。黒地に金・銀を星のように散らばせた「宙(sora)」。現代的なインテリアに似合いそうな、明るいアースカラーにこだわった美しい10色のろうそくの詰め合わせもある。これらも皆、糠ろう100%で作られている。シンプルなデザインの円筒のボックスに入れられた「お米のろうそく」はプレゼントとしても良さそうだ。
電気を使う生活を見直したいという思いの人も増えている。この夏の夜はしばし照明を消して、こんな和ろうそくを灯し、家族で静かな闇を楽しんでみたい。

●大與
http://www.warousokudaiyo.com/


●夢京橋あかり館
http://www.akarikan.co.jp/


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