『ものづくり』からできること

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第6回
シンメトリーと方向性

前回「幸福へのモノの視点」でふれた自動車の話、覚えていますか?「道具」として「Box型」のクルマが多くなったと書きました。
今回はこのBox型のクルマを例にあげて、「シンメトリーと方向性」というテーマで書こうと思います。

小さい子供にこの形状のクルマを横見で絵に描いてもらうと、どうなるのでしょう?
ほとんどバスのような四角いシルエット(アウトライン)になるのではないでしょうか。(私はそのように想像致します。)
バスとの違いは、車体に対するタイヤの大きさと、フロント部分でしょう。
フロントノーズが目立たない、または存在しない形状は、シルエットで見たイメージでは前後の区別がつかない車種もあります。

この「前後がわからない」が意味するのは、方向性のあいまいさからくる「スピード感の弱さ」。
言い換えれば、「安定→安全」を連想させます。モノを見た時に前後(左右)の形が正対称もしくはそれに準じるものであれば、「不動的」な印象を与えることもあります。揺れや振動が感じられない空間を売り物とする快適移動ツールが、このBox型の商品そのものなのです。
反対にエッジが立ったスポーツカーは、進行方向が分かりやすいデザインです。

ここで「スタイリッシュ」という言葉を使うとしたら、どちらのクルマを指すのでしょう?
広辞苑では「粋で恰好のいいさま」となっていますが、私が考えるスタイリッシュの定義とは、「躍動感があるもの(動きが感じ取れるもの)」です。それを踏まえるとBox型のそれよりも、先のとがったスポーツカーのほうが適切ですね。

方向性をもつ(動きがある)=形状におけるスタイリッシュ

方向性をもったクルマのデザインは、

・横から見たとき、ボディの前と後のシルエットがハッキリ異なっている
・向かう方向があるため、時の流れがある=時間が存在する→スピード感がある。

逆に方向性をもたないクルマは、

・横から見たとき、ボディの前と後のシルエットが判別しにくい。
・不動なイメージをもち、時間が存在しない=永続的不変→ゆっくり感、リラックス感がある。

ここまではクルマを例に考えてきましたが、次に「家具」を取り上げてみます。
スタイリッシュの定義は変わりません。方向性の有無(内容)も同じです。
家具のシルエット(アウトライン)の左右は正対称(シンメトリー)が多いと気付くはずです。

部屋に置かれている家具には「安定」が必要です。従って、左右に方向性を示すデザインが少なくなります。では、「スタイリッシュな家具」は存在しないのか?
答えを先に言うと、存在します。奥行きの「向こう側」と「手前側」に方向性をもたせます。または、上下に施します。

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