『ものづくり』からできること

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第7回
矢印の先には、私たちの未来がある

そこで、みなさんになじみ深い「やかん」を使って説明にします。

やかんを火にかけると、中の水がお湯になり時間の経過によって、蒸発していきます。
矢印は気化した水の移動を示します。
このときに注目してもらいたい所は、やかんの口の部分です。
「すぼまった形状」は矢印のくさびと同じ印象をもち、向かう方向を指します。
「とがった形状」や「すぼまった形状」は「矢印」と見立てることができるのです。
またそれらの形状の先には必ず「未来」があることを覚えていてください。

’70~’80年代にカーデザインに積極的に採用されたウェッジシェイプ(くさび型)は強烈な方向性をもち、人々にその鼻先(フロントノーズ)を見つめさせました。やかんでも注視するのが、その口の先端ですよね。みなさんは普段、知らず知らずのうちに、とがった先を見る習慣ができているのです。
そのような「とがったフォルム」を取り入れたデザインが現代では減少しているように思えます。ウェッジシェイプを活用したモノづくり、先進的な(字の如く、先へ進む=未来へ向う)デザインを積極的に取り入れることが世界的規模の活性化に追い風を与えるものだと私は信じております。丸い形状の商品がはびこる現在、エッジの立つ時代をつくるのもデザイン次第だと思うのです。
やさしいデザインばかりがもてはやされ、とがったデザインが悪者であるかのように、時代とともに失われてきました。カタチの世界「3次元」で言うと、それは退屈な社会をつくり出しているようでとても残念なことです。画一化された「モノゴト」は平らな日常をつくり、幸福感に欠けた生活につながります。優等生ばかりを狙ったデザインも考えものだと言えるでしょう。

矢印の先には現在では見ることができない未来があります。地球上生物でその矢印をつくれるのも私たち人間だけなのかもしれません。

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