私が見つけたライフワーク(2)

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第11回
雑草の王様「タケニグサ」

タケニグサは、日本では完全に雑草扱いされていると思います。しかし、植物学者の牧野富太郎博士は「どんなつまらぬ雑草でもながめればながめるほど興味がわき、味わえば味わうほどすばらしいものであることがわかってきます」と言い、タケニグサについても「雑草の王者の風格をもっている」と言っていました。
また、雑草に関する有名な言葉に「雑草という草はない」というものがあります。調べてみると、吹上御苑で任官まもない侍従の方が建物周辺に見苦しさを感じて草を刈ったとき、昭和天皇が「どうして刈ったのか?」とお尋ねになったので、「雑草が生い茂って…」と答えたところ、昭和天皇に「雑草ということはない」と言われたのが拡大解釈されて広まったようです。
いずれにしろタケニグサは、雑草であったとしても、威風堂々として雑草の王様的風格を持っていると思います。

威風堂々としたタケニグサ

そういえば昔、有名人にタケニグサが好きな人がいる、という話を何かで読んだ気が…。
本だったか雑誌だったか、よく覚えておらず、ネットで調べてもわかりません。(このネット検索、便利ではあるのですが、最近はユーザビリティよりビジネス優先で、宣伝系のサイトばかりが上位に表示されるので、本当に必要な情報を探し出すのが大変です)
ところがある日、お茶を飲みながら手元の図鑑や資料でタケニグサについて調べていると、偶然その謎がとけたのです。なんとそこには、「タケニグサを愛した柳田国男先生」の文字が!手元の図鑑に答えがあったとは…。
だとすれば、「野草雑記・野鳥雑記」の中にタケニグサのことが書かれているはずと思い早速、同著を調達することにしました。ネットで注文するか本屋さんで購入するか迷いましたが、本屋さんのネット在庫検索で在庫があると分かったので、外出したついでに本屋さんに寄って手に入れました。
こういうときは、ネットは本当に便利です。地方でも在庫検索できる本屋さんが増えてきたので、時間のむだがなくなりました。この方法は、在庫さえあればネット注文より早く手に入ります。

そして早速「野草雑記・野鳥雑記」を読んでみたところ、野草雑記では大きな章立てが五つほどあり、その最初の章でタケニグサに関することだけで12ページにも渡って書かれていたのです。
民俗学者だけあって、専門家が書くような植物の科学的特徴だけでなく、人間とのかかわりから、地方での呼び名、名称の成り立ちまであり、柳田先生のタケニグサを応援する気持ちが伝わってくる内容でした。

そして、しめくくりとして、次のことが書かれていました。
「しかしタケニ草の世もまた開けた。人と交渉する言葉は多くなり、それがまた追々と耳に快いものとなろうとしている。この落莫(らくばく)たる生活があわれを認められ、終(つい)に人間の詩の中に入って来るのも、そう遠い未来ではないように思われる」…
残念ながら、今も雑草扱いのタケニグサですが、俳句の世界では季語にもされ、短歌などでも歌われることもあるようなので、この思いもむだではなかったようです。

ところが、日本では雑草のタケニグサも、「所変われば品変わる」ではありませんが、西洋では大切にされていて、植物園でも育てられているのだそうです。
実際にイギリスのYAHOOで、タケニグサの学名「 Macleaya Cordata」を調べると、確かに「Plume poppy」 の名で扱われていて、ネットでも販売されていることがわかりました。「大変育てやすい」と紹介されているのを見たときは、雑草なのだから当たり前だと、思わず笑ってしまいました。それにしても、タケニグサがガーデニング用の草花として園芸店で実際に販売されているとは…。文化の違いなのか、庭の広さの違いなのか分かりませんが、本当に驚きました。

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