フロム・ナウ流 有料老人ホームガイド

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第21回
元気を取り戻す力がある

4か所の病院で見放された患者を「教科書には載っていない手法」で救済

老人ホームの運営母体もさまざまですが、結構多いのが病院です。
ホーム選びの指針としても「医療体制の充実」の重要性は高いですから、「医師が診てくれる」というのはポイント高いんですよね。

ここ「幸楽壱番舘」は、母体は「サクラメディカル」といって、老人ホームのほか医療機器・福祉用具販売、リゾート施設の運営などを行っている企業ですが、サポートしているのが手の外科の名医として有名な山口利仁医師であることがアピールポイントです。
山口医師は、八王子で20年近く、手の外科を中心とするマイクロサージャリー(顕微鏡を用いた組織修復手術)などの医療を提供してきた高月整形外科病院の院長。

「手の外科」という言い方、聞き慣れない方も多いと思いますが、外科の世界では高度な治療については部位ごとに専門が分かれているのです。
なかでも手は、ただ骨がくっつけばいいみたいなことではなく、本来の複雑な動作ができるようになって初めて「治った」となる部位。治療には独特のむずかしさがあるのです。
私は何度か、山口医師を取材させていただいたことがありますが、感嘆したのは発想の柔軟性と後進を育てることへの使命感の強さです。

その日、山口医師が手術したのは70代の女性でした。
彼女は1年1ヶ月前に都心の繁華街で転倒し、右手小指を骨折。以来、T大病院を始め4か所もの病院で治療を受けたものの、骨折は一向によくならず、動かすこともできなければ、痛くて触ることすらできないまま、1年以上が経過。本当に「ワラにもすがる思い」で山口医師のもとにたどりついたと、本人から伺いました。
一体、彼女の指はどうなっていたと思います?

「最初の治療が、あまりにもずさんだったんですよ。複雑骨折を、指用のプレートで固定したのですが、細菌感染を起こしてしまったのです。すると細菌は、腱(けん)に沿って拡がり、関節にも入り、増殖しやすくなります。
そのため腱も靭帯(じんたい)も、関節軟骨もすべてが融解してしまい、関節が脱臼(だっきゅう)する。来院したときには、皮膚が溶け、骨は露出。指は曲がったまま動かせなくなっていました」(山口医師)

とんでもなく痛そうですよね。
この手術は相当むずかしいものだったようで、彼女が4つめの病院で手術を受けた際には、担当医から「手が壊れてしまいそうで、何もできなかった」と退院間際に告げられたとのこと。
それを山口医師は、「教科書には載っていない」独創的な手法で手術し、痛みのない日々を女性に取り戻すことに成功したのでした。

術後初めての診療時、山口医師は若手の医師を集め、症状から手術法まで細かく説明。さらに、リハビリ専門のスタッフと患者さんを引き合わせ、今後の治療手順からリハビリ方針まで話していました。

若手医師の表情は真剣そのもの、リハビリスタッフはにこやかでとても優しそうでした。

だいたい取材が入ると、誰もが真面目でいい人になるものですが、普段していないことを自然にはできないもの。これは本物だと思いました。

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