“その時”では遅い相続の話

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第7回
相続の手続きは意外に大変

相続では揉めなくても、税金がかからなくても、必ずしなければならないことがあります。それは相続のさまざまな手続きです。体験して初めて、その大変さを痛感したという声をよく聞きます。何に手間がかかるのかを前もって知ることは、とても重要でしょう。そこで今回は、意外に知られていない相続手続きの大変さについて説明します。

亡くなった人の全財産を調べることは難しい。

まず、亡くなった人の全財産をすべて洗い出す作業に、かなりの手間がかかります。預金残高を調べ、不動産などはきっちり評価するなどして財産を一覧表にまとめる。それは大変な作業です。特に、不動産より金融資産を全部把握することが難しいのです。ペイオフに備えて、金融機関を分散して預金していたり、金利優遇キャンペーンを利用する目的で、頻繁に預金先を換えていることもあるでしょう。

たとえ一緒に暮らしている子どもでも、どこにいくら預けているかをすべて知っているわけではないでしょうし、ましてや離れて住んでいれば、まずわからないでしょう。だから、財産の一覧表が用意されていれば、相続の際、大変役に立ちます。

相続による名義変更が大きな負担に。

大変なのは財産の洗い出しだけではありません。相続による名義変更も手間のかかる作業です。この手続きは、預貯金、不動産、株式、自動車など財産の種類によって方法や必要書類などが異なります。また、同じ預貯金でも、金融機関によって手続きの方法や必要な書類、書類の書き方などが違ったりします。そのため、書類を提出しても、不備が生じやすく、何度も書類の再提出が求められることもあります。

下表には名義変更など相続手続きに必要な書類の例を挙げました。特に大変なのが亡くなった人の戸籍謄本を揃えることです。戸籍謄本は、法定相続人全員を確定させるのに必要で、隠し子などいないとわかっていても、亡くなった人が生まれてから亡くなるまでのすべての連続した戸籍謄本が必要になるのです。引っ越しなどしていれば以前住んでいたところの役所とのやりとりが必要になります。高齢の配偶者や仕事で忙しい子どもなどにとっては、これは大変負担になります。

相続税の納税期限は死後10ヵ月。

誰がどの財産を引き継ぐのかを、法定相続人全員の話し合いで決めることを、遺産分割協議といいます。民法上は、この遺産分割協議には期限はありません。

しかし、財産の分け方が決まらないと、財産を自由に使ったり、処分したりすることができません。そこで、なるべく早く遺産分割協議をまとめて、名義変更などの手続きをしたほうがよいでしょう。

相続税の納税期限は、被相続人の死を知った翌日の10ヵ月以内と定められています。この間に財産の分け方が決まらないと相続財産が使えず、相続税支払いのために相続人が自分の預貯金を使ったり、借金や延納しなければならなくなることもあります。

【図表】相続手続きの必要書類(例)

なお、本文は特定の商品などの勧誘を目的とするものではなく、
文中の意見にあたる部分は筆者の見解であり、三菱UFJ信託銀行を代表するものではありません。

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